ペルー・ガストロノミーを代表する料理のひとつ、Arroz con Pato(アロス・コン・パト/鴨の炊き込みご飯)。日本ではアロス・コン・ポヨ(鶏の炊き込みご飯)のほうがよく知られていますが、王道はやはりこのパトを使ったバージョンです。
パトの皮目をじっくり焼いて抽出した脂には、何ともいえぬ旨みがありますよね。濃厚でほんのり甘く、コクとうま味に溢れていて。舌に残るこの余韻は、鶏肉では再現不可能。そんなパトの旨みを吸い尽くしたこの炊き込みご飯は、ペルーグルメの頂点に君臨するにふさわしい一品だと思います。
さて、リマ市内のスーパーやメルカドではなかなか入手できないパトを求め、ラ・ビクトリア区ガマラの東側にあるメルカド・ミノリスタ(小売市場)に行ってきました。ここにパト専門店が並ぶ一角があり、リマ北部の街ワチョで育てられている新鮮なパトを購入することができます。
ペルーのパトはカモ科マガモ属のpato doméstico(いわゆるアヒル)と、カモ科カイリナ属の野バリケンを家禽化したpato criollo(クレオールダックまたはムスコビーアヒル)が主な品種。クレオールダックは顔が赤く、筋肉がよく発達しているのが特徴だとか。
ちなみにスペイン語では鴨もアヒルもpato(パト)なので、私はずっとArroz con Patoのことを「鴨の炊き込みご飯」と訳しています。日本語なら「鴨」のほうが響きがいいし、「アヒルの炊き込みご飯」ってどうも食欲をそそらないですもんね(笑)。
日本では骨付きの鴨(アヒル)の入手は難しいかもしれませんが、これ、本当に美味しいです。鴨鍋やかも南蛮も捨てがたいけれど、機会があればぜひこの贅沢な炊き込みご飯を作ってみてくださいね。
【材料】2~3人分
- 米 2合
- 骨付き鴨肉 人数分(今回は全部で800gほどありました)
- タマネギのみじん切り 1/2個
- すりおろしニンニク 大1/2+小1
- アヒ・アマリージョペースト 大2
- クラントロ(コリアンダー) ひとつかみ(100g前後)
- クラントロをミキサーにかけるための水 100ml
- サパージョ・ロチェ 50g
- パプリカ 大1/2個
- グリーンピース 1/2カップ
- チチャ・デ・ホラ 150ml
- 黒ビール 150ml
- 水 200~300ml
- 油、塩コショウ、クミン、オレガノ 適量
- 付け合わせ:サルサ・クリオージャ
【作り方】
1、よく洗った鴨肉を人数分にカットしてボウルにいれ、チチャ・デ・ホラとすりおろしニンニク小1、クミン、コショウを入れて混ぜ合わせ、一晩冷蔵庫で寝かせる。
2、翌日。マリネした鴨肉を冷蔵庫から出し、常温に戻す。米を洗ってザルにあげ、水を切っておく。クラントロと水100mlをミキサーにかけておく。サパージョ・ロチェの半分ほどをすりおろし、残りは約1cm角にカットしておく。
3、鍋に油を軽く敷き、鴨肉の皮面を下にしてじっくり焼いて、脂をしっかりと出す。皮に焼き目が付いたら裏返して身も焼き、いったん取り出しておく。
4、アデレソを作る。3の鍋でタマネギのみじん切りとタマネギの水分を引き出すための塩ひとつまみを加えてよく炒め、タマネギが透き通ってきたらニンニク、アヒ・アマリージョペーストの順に加えてさらに炒める。そこにサパージョ・ロチェのすりおろしとクラントロ液の2/3を加え、全体に一体感がでるまでしっかり炒めあわせ、塩コショウ、クミン、オレガノで味を調える。これでクラントロ入りアデレソのできあがり。
5、4の鍋に鴨肉とチチャ・デ・ホラのつけ汁を戻してアデレソを絡め、黒ビールと水を200mlほど加えて蓋をし、鴨肉が柔らかくなるまで40~45分ほど加熱する。鴨の骨もあれば一緒に煮て出汁を取ろう。
6、鴨肉が柔らかくなったら一度取り出し、洗った米とグリーンピース、クラントロ液の残り、刻んだサパージョ・ロチェを加える。水の量は米の表面から2~2.5cmほどの高さを目安にすればOK。水分が足りなかったら適宜足すこと。
6、鍋を強火にして一度沸騰させ、全体を混ぜ合わせたら蓋をして火を弱め、水分がなくなるまで数分炊く。鍋底にクラントロ液が沈殿して焦げ付きやすいので注意しよう。米が炊き上がったら火を消して5の鴨肉と細切りにしたパプリカを鍋に戻し、蓋をして10分ほど蒸らせばできあがり。サルサ・クリオージャを添えて召し上がれ。
【Keikoからひとこと】
作り方にこれといった注意点はありませんが、できればパトは脂の乗ったものを使ってください!
以前小さめのパトを使って作ったところ、パトが痩せていたのか脂が思ったほど出ず、なんとなく物足りない仕上がりになってしまいました。今回ちょっと大ぶりのパトを購入し、じっくりと脂を出してそれでご飯を炊いたら、うまい!甘い!その他の材料は同じなのに、まったく違う仕上がりで、自分でも驚きました。パトの脂、バンザイ!
ちなみにパトの脂は不飽和脂肪酸の含有量が高く、血液サラサラ効果や動脈硬化の予防が期待できるそう。脂の融点が24~30度と人の体温より低いため、体内に蓄積されることがないのも特徴なのだとか。
⑤の工程でパトを煮込むと、物凄い脂が出てきます。思わずすくい取りたくなってしまいますが、そこは我慢がまん!旨みと栄養の素をご飯にしっかり吸わせて、美味しいアロス・コン・パトに仕上げてくださいね。