Cebiche de Champiñones セビーチェ・デ・チャンピニョネス

ベジタリアン・セビーチェの代表格、Cebiche de Champiñones(セビーチェ・デ・チャンピニョネス)。生のマッシュルームを使ったこのセビーチェは、ビーガンやベジタリアン向けの食事としてだけでなく、ダイエットメニューとしても人気です。

キノコといえば、ほぼマッシュルーム一択というペルーのグルメ事情。リマの高級スーパーにはchampiñones Portobello(チャンピニョネス・ポルトベージョ)という表面が茶色いマッシュルームや、Hongos Ostra(オンゴス・オストラ)というヒラタケの仲間が売られていますが、それ以外は滅多に見かけません。アンデスやアマゾンには、いくつもの食用キノコが確認されているんですけどね。あとはオンゴス・セコス(乾燥キノコ)くらいで、キノコ好きにとってはちょっと残念な状況です。

さてこのセビーチェ・デ・チャンピニョネスにも、ちょっと変わった誕生秘話があったのでご紹介しましょう。

『今から半世紀ほど前のこと。リマ郊外の田舎町で養鶏場を営んでいたエレンさん。しかしある時、一夜にしてニワトリたちが全滅するという不幸に見舞われ、養鶏場を閉鎖するしかありませんでした。エレンさんは小さな食堂を始め、コツコツと働きました。

ある日、見知らぬ“グリンゴ(白人男性、主にアメリカ人を指す)”が店を訪れ、それからたびたび通ってくるようになりました。どこから来たのかを尋ねたところ、彼は「サンタ・クララでマッシュルーム工場を経営している」と答えました。

数か月後、今度はグリンゴは2人でやってきて、料理とビールを注文しました。そのうちの1人が店の厨房に入ってきて、袋に入ったマッシュルームをたくさんくれたのです。「ありがとう。これはどうやって食べるんだい?」とエレンさんが尋ねると、男性はそれをバターでソテーしてみせてくれました。

エレンさんが目を離した隙に、そのグリンゴたちはいつのまにか忽然と姿を消していました。テーブルには手つかずのビールと料理、そしてお代もちゃんと置いてありました。グリンゴたちを探しましたが見つからず、しかたなくエレンさんは2㎏ものマッシュルームを冷蔵庫にしまい、そのまま忘れてしまいました。

2週間後、はたと思いだしてマッシュルームを取り出してみたところ、それは貰った時のまま真っ白で、まったく悪くなっていませんでした。エレンさんはこの奇跡のマッシュルームを使ったメニューをあれこれ考え、セビーチェにすることを思いつきました。

エレンさんのマッシュルームのセビーチェの評判は瞬く間に広まり、子豚の丸焼きや鶏肉の唐揚げとあわせて店の看板メニューになりました。エレンさんは昼夜を問わず働き、養鶏場の借金を返すことができたそうです。そのお店が、リマ市アテ・ビタルテ区サンタ・クララにあるエル・トレボルというレストラン。マッシュルームのセビーチェの美味しさの秘密は、エレンさんが墓にもっていってしまいました』 

相変わらずツッコミどころ満載ですが、誕生秘話なんてそんなもの。しかしポヨ・アル・オルノでご紹介したグランハ・アスールもサンタ・クララだったし、サンタ・クララには何かあるのでしょうか?もしかしたらグルメ関係のパワースポットだったりして。ちょっと面白いですね。

【材料】一皿分(1~2人分)

  • 生のマッシュルーム 100g
  • レモン汁 大2~3
  • たまねぎ 小1/4個
  • ニンニク 小1かけ
  • ショウガ 小1かけ
  • アヒ・リモ 1/3本
  • クラントロ(コリアンダー) 2~3本
  • オリーブオイル 大1
  • 塩コショウ 適量
  • オプション:アボカド、トマト、チョクロ、パプリカ、セロリなどお好きな野菜
  • 付け合わせ:茹でたカモーテ(サツマイモ)、茹でたチョクロ、レタス、カンチャ(炒りトウモロコシ)など。

【作り方】

1、キッチンペーパーでマッシュルームの表面の汚れをぬぐい、軸の黒くなった部分を取り除き、薄くスライスする。たまねぎを繊維に沿って薄くスライスして水に放ち、辛味を取る。アヒ・リモの半分をみじん切りに、残りの半分はそのまま取っておく。ニンニクとショウガは包丁などで軽く押しつぶしておく。コリアンダーの葉を刻み、芯(葉が残っていてもOK)と分けておく。

2、ボウルに1のマッシュルームを入れ、軽く塩コショウをして混ぜ合わせ、しばらく置いておく。マッシュルームがしっとり汗をかき、水分が出てきたらOK。

3、別のボウルにレモン汁とアヒ・リモ(みじん切りでないほう)、ニンニク、ショウガ、クラントロの芯を入れ、スプーンでそれぞれを押し付けながら軽く混ぜ合わせ、香りや風味をレモン汁に移す。

4、2のボウルにみじん切りのアヒ・リモと刻んだクラントロの葉を入れ、3のレモン汁とオリーブオイルを加え軽く混ぜ合わせる。そこに水気を切ったスライスたまねぎを入れ、最後に塩コショウで味を調えたらできあがり。

【Keikoからひとこと】

今回はマッシュルームとレモン、タマネギのみのシンプルなセビーチェにしましたが、ここに小さくカットしたアボカドやトマトなどの野菜を加えるとボリュームもアップしてオススメ。お好きな野菜を加えてください。

またマッシュルームではありませんが、アンデスの街ワラスにはCebiche de Chocho(セビーチェ・デ・チョチョ)というベジタリアン・セビーチェがあります。タルウィというアンデス産の豆を使ったもので、これまたなかなかのお味。ワラスの名物料理なので、もしトレッキングなどで訪れたら、ぜひ食べてみてくださいね。

タルウィ、またはチョチョと呼ばれるワラス名物の煮豆セビーチェ