Patasca パタスカ

ケチュア語で「破裂した/開いた」という意味を持つアンデスのスープ、Patasca(パタスカ)。カルドを吸ってぱかっと割れた“モテ”がたっぷり入っており、Caldo de Mote(カルド・デ・モテ/モテのスープ)とも呼ばれます。滋味あふれるパタスカは、プレヒスパニックの時代から食べられてきたペルーの伝統料理です。

¡新食材! 】Maíz mote(マイス・モテ)について

パタスカの主役は、なんといってもmaíz mote(マイス・モテ)と呼ばれる乾燥トウモロコシ。ギソ・デ・トリーゴのレシピで『moteは水で処理された穀類や豆類の総称』とご紹介しましたが、ペルーで“モテ”といえばほとんどの場合、この乾燥トウモロコシ(水で戻したものや、茹でたものも含む)を指します。決して生のトウモロコシではないのでお間違いなく。

モテ100g中の炭水化物は25gとご飯より少なくしかも多糖類、繊維質が豊富でコレステロールを下げる働きもあります。モテは過酷な自然環境に生きるアンデスの人々にとって、なくてはならない大切なエネルギー源です。

ペルーにトウモロコシが伝わったのは、6000年前とも7000年前ともいわれています。アンデスに根付いたこの作物はさまざまな品種を生み出し、クスコの聖なる谷にはMaíz blanco gigante del Cusco(クスコの大トウモロコシ)も誕生しました。その粒を煮込んだモテは、インカの人々にとってさぞやご馳走だったでしょうね。

植民地時代にはペルー各地で食べられていたのに、調理に時間がかかるためか、いつしかリマを始めとする都市部ではあまり作られなくなってしまったというパタスカ。確かにリマではカルド・デ・ガジーナほど一般的ではなく、アンデス料理店やスープ専門店でないとなかなかお目にかかれません。

使い古されたかまどに大鍋を仕掛け、畑仕事をしている間に羊の骨やすね肉とたっぷりのモテをコトコトととろ火で煮込む。そんな光景がぴったりの、まさにアンデスのスローフードです。

【材料】2~3人分

  • マイス・モテ(乾燥) 100~150g
  • タマネギのみじん切り 1/2個
  • ニンニクのみじん切り 大1
  • モンドンゴ(ハチノス) 200g
  • 骨付き牛肉(今回はネック) 500g
  • 牛骨(ゲンコツ) 500~700g
  • 牛足(今回は豚足) 1本
  • 米 大2
  • イエルバブエナ(スペアミント)4~5枝
  • 塩、牛乳、オレガノ、ペレヒル(イタリアンパセリ)、細ネギ 適量
  • オプション:ロコトの輪切り、お好みのサルサ・デ・アヒ、レモン

【作り方】

1、モテをさっと洗い、たっぷりの水に一晩漬けておく(12時間以上がおススメ)

2、鍋によく洗ったモンドンゴと水と牛乳少々、イエルバブエナ1~2枝を加え、さっと茹でて臭みを取る。後でじっくり煮込むので、ここでは臭いさえなくなればよし。

3、大鍋に油を敷いてたまねぎとニンニクのみじん切りを炒め、ぶつ切りにした骨付き牛肉やゲンコツ、豚足を入れて表面を焼き付ける。鍋に全部入りきらないようなら、2~3回に分けて少しずつ炒めて。

4、3の大鍋に水を切ったモテとモンドンゴ、米を入れてたっぷりのお湯(2リットルくらい)を注ぎ、イエルバブエナ2~3枝を加えて一度沸騰させ、その後2~2.5時間ほどコトコト煮る。加熱時間はモテの硬さ次第なので、もう少しかかることも。また灰汁が気になる場合は取り除いていいが、灰汁もうま味の一部なので取り過ぎないこと。

5、米が溶けてスープが白濁し、モテが少しずつ割れてきたら、骨付き肉やゲンコツ、豚足、モンドンゴを取り出して食べやすい大きさにカットし、再び大鍋に戻す。ゲンコツやその他の骨、イエルバブエナは取り除く。

6、引き続きじっくり加熱して、モテが花が咲いたようにパカっと割れてきたら、オレガノを加えて塩で味を調えたらできあがり。皿に盛り付け、刻んだイエルバブエナの葉やペレヒル、青ネギを散らす。ロコトの輪切りを添えたり、お好みのサルサ・デ・アヒやレモンを添えて熱々を頂こう。

【Keikoからひとこと】

乾燥状態のモテはとても固く、給水が足りないと煮込んでもなかなかぱかっと割れてくれません。なので調理を始める前に、モテだけ下茹でしておくのもオススメ。リマのメルカドなら下茹でしたモテも売っているんですけどねぇ・・・でも圧力鍋を使えばあっという間なのでご心配なく。

そしてパタスカのうま味の素である四つ足動物の骨について。

今回は牛のネックとゲンコツ、豚足を用意しましたが、骨付きカルビなど他の部位でも構いません。アンデスでは羊肉を入れることが多いのですが、入手しづらいし、ちょっと癖があるので無理に使わなくてもいいかと思います。肉や骨をたくさん入れて、ぜひ濃厚なパタスカをお楽しみください!

今回使った牛ネックとゲンコツ、豚足。あと国産モンドンゴも準備しました。2~3人分でこれだけ使うなんて、なかなか贅沢ですね~。