Adobo Cusqueño アドボ・クスケーニョ

ペルーの古都クスコの朝食といえば、このAdobo Cusqueño(アドボ・クスケーニョ)。アヒ・パンカとロコトの風味が効いたしょっぱ辛いスープで、クスケーニョ(クスコっ子)にとっての “levanta muertos(レバンタ・ムエルトス:あまりの美味しさに死者さえ起き上がるという意味)” な一品です。

クスコではパン・オロペサという素朴なパンをスープに浸しながらいただきます。

アヒ・パンカの辛味とチチャ・デ・ホラの酸味が相いまったアドボは、まさにペルーの酸辣湯。そこにロコトの風味と鮮烈な辛味が加わるのだから、辛いもの好きな方にはたまりません。ただレストランで頂くアドボは、とにかく塩味がきついんですよね。ペルー人は塩味をうま味と思っている人が多いのか、とにかくしょっぱいのが好きで・・・でも自分で作れば好みの塩加減に調整可能、そこが家庭料理の最大の魅力です。

前回アドボ・クリオージョスタイル(リマ風アドボ)をご紹介した時、「アレキパ風アドボはまた別の機会にご紹介するとして」と書きましたが、アレキパ風に欠かせないチチャ・デ・ギニャポがなかなか手に入らなかったので、リマでも簡単に入手できるチチャ・デ・ホラを使ったクスコ風アドボを作りました。チチャの種類は違うけれど、両者とも作り方はほぼ同じなので、どうぞ大目に見てやってください(チチャ・デ・ホラは日本のキョウダイマーケットでも購入できます)。

クスコの人はクスコ風を、アレキパの人はアレキパ風をこよなく愛していて、どちらもが「我が一番!」と譲りません。アヤクチョやタクナにもそれぞれ郷土料理としてのアドボがあります。ペルーに来られた際は、ぜひ各地のアドボを食べ比べてみてくださいね。

【材料】2人分

  • 骨付き豚もも肉 400~500g
  • たまねぎ 1
  • すりおろしニンニク 大1/2
  • アヒ・パンカペースト 大1
  • チチャ・デ・ホラ、またはビール+リンゴ酢 or 白ワインビネガー 1リットル
  • ロコト(できればロコト・セラーノ) 小1個
  • ピミエンタ・デ・チャパ 4~5粒
  • ローレル 1枚
  • 塩コショウ、クミン、オレガノ、ローズマリー、シナモンスティック 適量
  • とろみ付け:細かいパン粉、たまねぎ少々+チチャ・デ・ホラ、または水溶き片栗粉
  • オプション:赤ワイン、砂糖
  • 付け合わせ:パン

¡新食材! 】Pimienta de Chapa(ピミエンタ・デ・チャパ)について

右がチャパで左が一般的な黒コショウ。大きさが全然違いますね!

ペルーでchapa(チャパ)またはllana(ジャナ)と呼ばれるこのピミエンタ(コショウ)、実はオールスパイスのことです。オールスパイスはフトモモ科オールスパイス属の香辛料。メキシコ南部のユカタン半島からジャマイカ辺りが原産で、ペルーのアマゾンでも栽培されています。シナモンとナツメグ、クローブの香りを併せ持つ万能香辛料で、ペルー料理では滅多に使わないので紹介させて頂きました。今回はホールで使用していますが、もちろん粉末でも大丈夫。でも量は控えめにお使いくださいね。

【作り方】

1、豚肉を適当な大きさ(数cm角)にカットする。大きめの鍋に豚肉とすりおろしニンニク、アヒ・パンカペースト、チチャ・デ・ホラ、塩コショウ、チャパ、クミン、オレガノ、ローズマリーを適量入れ、豚肉を漬け込んで一晩寝かせる(時間がない場合は2~3時間でも)。

2、豚肉をマリネした鍋をつけ汁ごと火にかけ、ローレルとシナモンスティックを加えて豚肉が柔らかくなるまで30~40分茹でる(豚肉の部位や大きさによる)。チチャ・デ・ホラだけだと酸味が少しきついので、それが苦手な人は一部赤ワインに置き換えてもいい(100mlから多くても200mlくらい)。

3、豚肉を煮込んでいる間に、たまねぎを大きめのくし切りにカットする。アドボのとろみ付けにたまねぎ少々+チチャ・デ・ホラを選択する場合は、ここでタマネギ少々(1/8個分くらい)と鍋の中のチチャ・デ・ホラを少し取り出し、ミキサーにかけておく。パン粉や水溶き片栗粉を選択する場合は、この作業は省いていい。

4、豚肉が柔らかくなってきたら、くし切りにしたたまねぎとロコトを丸ごと加えて引き続き加熱する。ロコトはある程度柔らかくなったら取り出して。辛いのが苦手な人は、早めに取りだそう。また辛味や酸味が気になる人は、砂糖を少し加えて味を調整しても。

5、タマネギに火が通ったらローレルとシナモンスティックを取り除き、ミキサーにかけたたまねぎかパン粉少々、または水溶き片栗粉を加え、アドボのスープにほんの少しとろみをつける。最後に塩で味を調えたらできあがり。

【Keikoからひとこと】

前日の晩に仕込んでおけば、翌日はそのまま鍋を火にかけるだけでできてしまうので、週末の遅めの朝食にぴったり。前日飲みすぎたお父さんでも、これなら簡単に作れちゃいますね。しかし朝からこんなにパンチのあるスープ(しかも骨付き肉入り!)をどんぶり一杯食べちゃうなんて、なんというかすごい食欲!でもアンデスの仕事はきついし、夏でも朝晩は冷えるので、朝からカプサイシンいっぱいのスープを飲むのは理にかなっているのかもしれません。

ロコトは今回、小ぶりのrocoto serrano(ロコト・セラーノ/セルバ地方で栽培される小さめのロコト)が手に入ったので、それを使用しました。ロコトはカットせず、丸ごと使います。そのまま煮込むだけでもロコトの風味や辛さはスープに溶け出すので、煮込みすぎには要注意!また日本で入手可能な冷凍ロコトはすでに細胞が壊れているので、丸ごと1つ入れてしまうと大変なことになってしまいます。小さくカットして煮込み時間を短めにするか、別鍋で煮込んで食べる時にその煮汁を足しながら食べるなど工夫してください。

「水を一滴も加えない」のがアドボ最大のポイント。なので片栗粉を溶く水も、できればチチャ・デ・ホラを使うべきですが、ほんの少量なら大して味に影響があるとも思えないし、まあいいかなぁと(でもクスコの人に怒られそうですね/汗)。辛味と酸味と塩味のバランスを好みに仕上げて、美味しいアドボを作ってくださいね。