大地の鍋、Pachamanca(パチャマンカ/pacha=大地、manca=鍋)。インカの人々はアンデスの神々にこのパチャマンカを奉納し、豊穣への感謝や翌年の豊作を祈願したといいます。
パチャマンカの原型となる料理は紀元500~1100年ごろに栄えたワリの時代に誕生したといわれていますが、アンデスの人々は有史以前から大地を鍋やオーブンに見立てていたようです。例えばフニン州タルマにある7000~8000年前の岩穴からは、加熱した石を利用したと思われる古代窯跡や炭の破片が見つかっています。インカがパチャマンカと命名するはるか昔から、人々は大地の女神パチャママの懐を借りて調理をしてきたんですね。
2003年、ペルー文化省は千年来の習慣であり、先祖の創造力と知恵の証でもあるパチャマンカを国の文化遺産に指定、毎年2月の第1日曜日を「全国パチャマンカの日」に制定しました。
神々への供物であり、アンデス最高のご馳走であるパチャマンカ。アンデスの抜けるような青空を思い浮かべながら作ってみてくださいね。
【材料】2~3人分
- 鶏肉、豚肉、牛肉、ラムなどお好きな肉 約1.5㎏(今回は骨付き鶏もも肉250g×2、豚バラ肉500g、骨付きカルビ500gを使用)
- ワカタイ 数本(葉/約1カップ=約30g)
- チンチョ 数本(葉/約1カップ=約15g)
- クラントロ(コリアンダー) 数本(葉/約1カップ=約15g)
- アヒ・パンカペースト 大2
- アヒ・アマリージョペースト 大1
- すりおろしニンニク 大1
- チチャ・デ・ホラ、またはビール 1カップ
- ワインビネガー 大2(チチャでなくビールを使う場合は大3)
- 塩 大1
- コショウ、クミン、オレガノ 各小1
- カモーテ(サツマイモ) 1~2個
- ジャガイモ 2~3個
- トウモロコシ(できれば皮付き) 1本
- 鞘付きそら豆 10本前後
- オプション:イエルバブエナ、ローズマリー、タイムなどお好みのハーブ 少々
【¡新食材! 】Chincho(チンチョ)について
ペルー原産のハーブ、Chincho(チンチョ)。このいかにもケチュア語といった感じの名前がいいですね~。チンチョはキク科コウオウソウ(Tagetes)属の植物で、学名はTagetes ellipticaといいます。葉は鋸歯状(ノコギリ状のギザギザした形)の楕円形をしており、ワカタイの葉をもう少し短く、薄くした感じ。薫り高く、パチャマンカやCaldo Verde(カルド・ベルデ)と呼ばれるアンデスのスープに欠かせません。
残念ながら日本では入手できないので、日本の皆様は市販のワカタイペーストにクラントロを加え、あとはお好みでさまざまなハーブをミックスさせてください。
【作り方】
1、ミキサーに上記材料のワカタイからコショウ、クミン、オレガノまでの材料をすべて入れ、よく攪拌する。フレッシュなワカタイやクラントロを使用する場合は、できるだけ葉の部分だけを入れるように。残った茎や枝は鍋で蒸す時の座布団替わりに使用するので、捨てずに取っておこう。
2、大きめのボウルに1のハーブソースと肉を入れ、肉に味が沁み込むようよく揉み、一晩~24時間冷蔵庫で保管する。
3、翌日、大きめの鍋か圧力鍋の底に1で余ったハーブの茎や枝、トウモロコシの皮などを敷き詰め、最初に肉類を入れ、その上にカモーテやジャガイモ、3~4個にカットしたトウモロコシ、そら豆(鞘ごと)の順に重ねていく。残ったハーブソースを全体に回しかけ、その上にまた余ったハーブの枝やトウモロコシの皮を乗せてしっかり蓋をし、1時間ほど中~弱火で加熱する(圧力鍋の場合は30~40分)。出来上がったパチャマンカに、お好みのサルサを添えて召し上がれ。
【Keikoからひとこと】
ハーブソースに漬け込んだ肉と野菜を鍋でじっくり加熱するだけで、特にこれといった注意点は何もありません。鍋底に敷くハーブの茎やトウモロコシの皮がない場合は、クラントロの茎やネギの青い部分なんかを利用して。ただネギは入れすぎると風味に影響するかもしれないので、なければないでいいと思います。ペルー人はハーブやトウモロコシの皮の上からスーパーのポリ袋をかぶせたりもしますね。私はちょっと抵抗がありますが、耐熱性の高いポリ袋であれば利用できると思います。
あと使用する鍋に具材が全部入りきるかどうかも、事前に確認してください。今回は容量3.7リットルの鍋を使いましたが、思いのほかお肉が多くてカモーテが1つしか入りませんでした(汗)。また圧力鍋を使う場合は蒸気ノズルが詰まらないよう、容量を守ってくださいね。
今回は3種類の肉を使用しましたが、1種類だけでもほかの肉に置き換えても構いません。ペルーではクイや羊を入れたり、ボリビアではリャマを入れることもあるそうですよ。いずれにせよ、できるだけ骨付き肉で豪快にどうぞ!