ペルー大統領クーデター未遂で弾劾、そして逮捕

旅行から戻った12月7日。帰宅したのがちょうど昼前だったので、荷物を片づけを始める前にまずは腹ごしらえと近所のセビチェリアへ直行した。

魚介のうま味たっぷりのチルカーノにレモンをちゅっと絞ってすすっていると、どうも店内の視線が私の頭上にくぎ付けになっているではないか。壁に掛けられたテレビ画面を見上げると、そこには“Autogolpe del Presidente Castillo(カスティージョ大統領による自演クーデター)”の文字が。帰って早々こんなニュースとは、まったくペルー生活は飽きることがない。

日本でもすでに報道されているのでご存知の方も多いだろう。12月7日(水)、3回目となる弾劾動議で窮地に立たされたカスティージョが国民に向かってメッセージを発表。議会を一時的に解散させて臨時政権を樹立し、新憲法を制定しようと目論んだ。しかしものの見事に失敗。側近にも見捨てられ、国家反逆罪という最も不名誉な罪で身柄を拘束された。

たった一人の浅はかな行動であっても、それが大統領となれば国内外への影響は少なくない。カスティージョ逮捕後に持ち直しはしたが、通貨ソルが急落し株価も大きく値を下げた。一部では買いだめに走る人もおり、「どこそこではトイレットペーパーがなくなったらしい」などと噂が飛び交った。

とはいえロックダウン前後のような混乱はなく、スーパーも混んではいたが殺気だった雰囲気はなかった。レジ待ち時間に携帯を眺め「元大統領拘束」のニュースに安堵する人々。「これであいつのクリスマスは刑務所の中だな」と笑いあう人たちもいた。

しかしまったくもってお粗末な大統領だった。政治経験ゼロのずぶの素人に権力を持たせると、ろくなことがない。就任1年半で発足した内閣は5つ、指名された閣僚は80人以上。家族ぐるみの汚職と職権乱用には目に余るものがあり、その浅ましさはある意味あっぱれとしか言いようがない。権力に溺れ、しがみ付き、蓄財に走るさまは下品そのもの。よくまあこれほど無能な人物が選ばれたものだ。ペルー人よ、頼むから次こそはよくよく考え、未来を託すに足る人物を選んでほしい。

明日12月9日は、昨年末に制定されたばかりの「アヤクチョの戦い」を記念する祝日だ。自政権が作った新しい祝日を拘置所で過ごす気分はどんなものだろう。ペルー史上初の女性大統領として就任したディナ・ボルアルテ女史の力量も気になるところ。とりあえず元大統領ほど愚かでないことを祈るばかりだ。