辛くてアヒッ!今日はペルー産トウガラシの日

アヒがなければ、ペルーのガストロノミーもまた存在しえなかったでしょう。古来よりその耕作を担う農家の様々な取り組みにより恩恵をもたらしてきたこの国の多彩なアヒ(トウガラシ)は、数々の郷土料理を通じてペルーグルメを支える伝統的な食材へと姿を変えました。

アヒの学名は、その実の種類を表す蒴果(さくか)のラテン語名“カプサイシン”で、空洞になった内部には種子が入っています。カプサイシンは長いものや丸いもの、ロコトのように大きなものや小さなもの、赤や緑のものなどペルー人になじみの深いすべてのトウガラシ類の果実に含まれています。パプリカもカプサイシンを多く含みますが、辛くないのでアヒとは見なされません。

ペルーは、商業ベースの栽培が可能なカプサイシン種の最も多い国。このことから、ペルー農業灌漑省(MINAGRI)は2018年、同省令第0060-2018-MINAGRIを通じ、9月の第1金曜日を「ペルー産唐辛子の日(el Día de los Ajíes Peruanos)」に制定しました。

それぞれのアヒの特徴は、それらを栽培する各地方の郷土料理にも反映されています。ここでは、ペルーの郷土料理に用いられる代表的なアヒをいくつか紹介します。

ペルーの代表的なアヒ(トウガラシ)

アルナウチョ(Arnaucho)

アヒ・リモに似ていますがもう少し太目で、黄色、赤、白、紫色などのバリエーションがある小さくてとても辛いアヒです。主にリマ州のバランカやワチョ、スーペ、アンカシュ州のカスマで栽培されています。魚や鴨などのセビーチェを始めとする、いわゆるノルテ・チコ(アンカシュ州に近いリマ州の北部域一帯を指す)の料理の食材の主役を務めます。

アマリージョ(Amarillo)

ペルー全国で売られているアヒ。アヒ・エスカベチェやアヒ・ベルデとも呼ばれます。“アマリージョ(黄色)”という名前ですが、熟すとオレンジ色になります。長さは10cm~15cmで比較的マイルドな辛さです。

アユヨ(Ayucllo)

フアネの材料に使われる、サン・マルティン州やウカヤリ州ではよく見かけるアヒです。鮮やかな色で時折紫がかったものもあり、アヒ・アマリージョに近い種類ではないかと考えられています。

カチョ・デ・カブラ(Cacho de cabra)

ランバイエケ州で栽培され、性質はアヒ・セレソにとてもよく似ています。同州の市場(いちば)では緑や赤のものを見かけますが、たまに“アヒ・カチョデ・ベナード(山羊ではなく鹿)”の名前で売られていることもあります。

セレソ(Cerezo)

形は小さくて丸く、サクランボに似ていることからこの名前が付いたのでしょう。非常に辛く、熟すと赤くなります。ランバイエケ州で栽培され、エスペサードやスダード、アパタディート、アロス・コン・パト、チンギリート、カウサ・フェレニャフェーニャ、カブリート・コン・フリホーレス、ソパ・デ・チョロス、ペピアン・デ・パビータ、チリンピコといった同州を代表する郷土料理の付け合わせや、アデレソの主役として料理に用いられます。

チャラピータ(Charapita)

小粒ながら辛さは強く、色はほとんどが黄色。サン・マルティン州を始め、ペルーアマゾン全域で栽培されています。フアネやパタラシュカ、パタコネス、タカチョのようなアマゾン料理には欠かせない食材です。

リモ(Limo)

アヒ・アマリージョよりも小型で、丸いものや細長いものを始め、時には気まぐれな形の変化に富んだアヒ。心地よい辛さと、非常に強い香りの持ち主です。赤や黄色、緑、白などがあり、セビーチェの調理には欠かせない食材です。

ミラソル(Mirasol)

アヒ・アマリージョを天日で干して乾燥させたものがこの“ミラソル(太陽を見る)”です。乾燥により風味が凝縮し、数か月の間保存することができます。通常このアヒは風味を生かすために乾煎りします。

モチェロ(Mochero)

ラ・リベルタ州のモチェ渓谷が原産のアヒ。アヒ・リモに似て大きさは中程度、色は黄色か緑で柑橘系の香りがあります。シャンバルやエル・カングレホ・レベンタード、ソパ・テオロガ、ペピアン・デ・パバ、ペスカード・ア・ラ・トルヒジャーナといった代表的な郷土料理の主役を演じています。

パンカ(Panca)

大型の乾燥アヒ。生食されることは少なく、熟すと濃い赤からチョコレート色に変わります。色は強烈ですが、それほど辛くはありません。

ロコト(Rocoto)

これまで紹介したうち最も辛く、唯一黒い種のあるアヒ。通常実は赤く、熟すとオレンジや黄色、緑色になることも。ペルーではアンデス産(または菜園種)と、より大きな中央アマゾン産の2種類のロコトが主流で、後者はロコト・レジェーノに使われます。

ペルー産唐辛子の遺伝資源

国立農業研究所(INIA)と国立ラ・モリーナ農業大学(UNALM)は共同で、ペルー原産トウガラシ国家遺伝資源収蔵への科学的な取り組みを行っています。

両者による前述の取り組みでは、現在900を超える遺伝子サンプルが収蔵されています。うちINIAは413種のアヒと296種のロコトを、一方UNALMではペルーの様々な地域で収集した200種以上のアヒを保管しています。

これらは国内で栽培されている多様なトウガラシの個体分類に大きく貢献すると共に、種の保存の強化に向けた科学的な単一基盤の確立を可能にし、小規模農家や消費者、ひいては研究者に対して恩恵をもたらすことでしょう。

(ソース: Andina 02/09/22)