かつてペルーで栄えたプレコロンビア期文化の遺産。それらはアンデスの集落における伝統や風習を通じて保たれ、今もペルーの文化と密接に関係しています。生物学的に貴重なアンデスコンドルもそのひとつですが、いまでは絶滅の危機に瀕しています。
空を飛べる鳥の中では世界最大とされるこの野生の種の保護と保存を確実なものとするために、絶滅の回避に向けた一連の取り組みを含む「アンデスコンドル保護国家計画2015-2025」がペルー政府によって策定されました。
アンデスの空の王者
アンデスコンドルの多くは羽毛が黒く、首の周りと両翼の先端は白くなっています。頭部は赤や茶色で羽毛がありません。全長は約142cmで、翼を広げるとその幅が330cmに達する個体も。通常の猛禽類との違いは、雄の体格が雌よりも大きいことです。
この大きな鳥は、鳥類のなかでも特に鋭い嗅覚を持っています。野生ではおよそ50年、飼育されているものでは最長80年の寿命があると言われています。
生物学的な重要性
また、動物の屍肉を食べることから、死体の組織が腐敗して病気の感染源となる可能性を減らし、生態系の中で重要な役割を果たしています。
文化的価値
コンドルは、古来よりアンデス世界の神話や伝説に登場する重要な動物であり、チャビンやパラカス、ナスカ、ワリ、ティワナコなどの文化でもその姿が描写されています。
インカではコンドルが不死の存在と考えられていたため、彼らの世界観で天上界や未来を表す「ハナンパチャ」にも登場しています。
最近では、背中に括りつけられたコンドルを振り落とそうと暴れる雄牛を観戦する「ヤワル・フィエスタ」のように、アンデス農村の祭りの主役にもなっています。
絶滅危惧種
アンデスコンドル減少の主な原因には、伝統祭祀や羽などの売買を目的とした密猟のほか、コンドルのことを良く思っていない一部住民による毒害や毒殺、あるいは生息環境の悪化などが挙げられます。
アンデスコンドルはペルーにおいて絶滅危惧種のひとつに分類されており、国際的には絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)や、移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS)で保護されています。
コンドルウォッチング
アンデスコンドルは一般的に、険しい山や切り立った崖などの人があまり近寄らない場所に巣を作って暮らし、繁殖します。通常は単独もしくは少数の群れで飛んでいますが、大型の鳥にもかかわらず空を舞う姿をそう頻繫に目にすることはありません。
とはいえ、ペルーにはコンドルの堂々たる飛翔を観察できるいくつかの場所があります。そのひとつが、アレキパ州の標高4160mに位置するコルカ渓谷のコンドル展望台、「エル・ミラドール・クルス・デル・コンドル」です。
クスコ州にも、有名なコンドルウォッチングポイントの「チョンタ展望台(エル・ミラドール・デ・チョンタ)」があります。「コンドルの聖地」としても知られるこの場所は標高3400mに位置し、ただこの素晴らしい鳥を見るだけのために多くの観光客が訪れています。展望台にたどり着くと、アンデス高地の絶景が出迎えてくれることでしょう。
この他にも、アマソナスやアヤクチョ、アプリマック、カハマルカ、ワンカベリカ、モケグア、タクナ、プーノの各州でコンドルの飛翔を眺めることができます。
コンドルの国勢調査
国家森林・野生動物機関(SERFOR)は、今年の8月9日から15日にかけ、国内16州で「第1回アンデスコンドル国勢調査」を実施します。この調査の目的は、世界最大の鳥のひとつでアンデス文明の象徴とされるアンデスコンドルの、ペルー国内における個体の生息数を把握することであり、そのプランは「アンデスコンドル保護国家計画2015-2025」にも盛り込まれています。
この国勢調査には、ワスカラン国立公園(アンカシュ州)やパンパ・ガレーラス国立保護区(アレキパ州)を始めとする全国10か所の自然保護区が積極的に参加しており、その調査範囲はさらに拡大しつつあります。この調査による既存情報の更新を通じて、コンドルの保護を推進する戦略の方向性が判断されることになります。
全国の太平洋岸およびアンデス地域で2021年から2023年にかけ実施予定の「ペルーにおけるアンデスコンドル生息数の回復に関する役務の改善に係る公共投資プロジェクト」の枠組みで履行される同調査は、総額813万4955ソレスの投資を必要としています。
前述のプロジェクトでは、傷ついたコンドルを保護し回復させるための国立レスキューセンターをクスコとプーノそれぞれの州に建設する予定です。さらに、リマとアレキパにも教育と観光を兼ねたインタープリテーションセンターが置かれることになっています。
(ソース: Andina 13/08/22)