アマゾンのピーナツスープ、Inchicapi(インチカピ)。inchikはケチュア語で “マニ(ピーナツ)”、apiは “とろっとした飲み物” または “濃いスープ” を意味します。ペルー原産のピーナツがたっぷり使われたこの濃厚なスープは、プレヒスパニック時代から受け継がれているといいます。
しかしなぜインカの言語であるケチュア語名を冠したスープが、アンデスではなくアマゾンの伝統料理として定着したのでしょう。インカの人々もマニをこよなく愛していたようだし、もう一つの主原料であるトウモロコシもアンデスの作物なのに?
アマゾンにあるならアンデスならではのピーナツスープがあって然るべきですが、ペルーでピーナツスープというと、このインチカピしか思い浮かびません。ちなみに隣国ボリビアにもsopa de maní(ピーナツスープ)があり、こちらは国民食級の扱い。ただしトウモロコシ粉は使わず、パスタとジャガイモ、ニンジンなどの野菜が入っています。
なぜアマゾンか・・・の疑問は解けませんが、暑い地方で汗をかきつつ熱々スープを頂くのも悪くはないですよね。栄養満点腹持ち抜群のアマゾンのピーナッツスープ、さっそく作ってみましょう。
【材料】たっぷり2人分
- ガジーナ、または骨付き鶏 400g
- タマネギ 1/4個
- ニンニク 1片
- 生落花生、または乾燥ピーナツ 100g
- 黄色いトウモロコシ粉、または白いトウモロコシ粉 50g
- サチャクラントロ、またはクラントロ(コリアンダー)10g
- アヒ・ドゥルセ 1個 またはパプリカ 20g
- 塩、クミン、オレガノ 適量
- ユカ芋、またはジャガイモ 200g
- 付け合わせ:サルサ・デ・ココナ
- オプション:茹で卵、茹でバナナ、チキンコンソメ
【¡新食材! 】Harina de maíz amarillo(黄色いトウモロコシ粉)について
インチカピに使用するトウモロコシ粉は、黄色いものと相場が決まっています。黄色=カルテノイドやルティンを含み、繊維質も豊富。でも味的には白いものと変わらないんですよね。
アマゾン食品専門店で「黄色いトウモロコシ粉ある?」と尋ねると、「インチカピだね?」と即答されるほどマストな食材。その理由を尋ねても「No sale!(これを使わなきゃインチカピの味にならないよ!)」とのことで・・・。まあオコパにおける動物クッキーのようなこだわりなんでしょうね。
【作り方】
1、生落花生や薄皮付きのピーナツは一晩水に浸け、調理開始前に薄皮を取り除いておく。
2、鍋に1.5リットルの湯を沸かし、ガジーナと塩少々を入れて30~35分ほど茹でてカルドを作る。ガジーナの脂が気になるようなら取ってもいいが、うま味なので取りすぎないように。
3、薄皮を取り除いた①のピーナツと水100ml程度をミキサーにかける。そこにタマネギとニンニク、サチャクラントロ、種を取ったアヒ・ドゥルセ、トウモロコシ粉を順に加えながらミキサーにかけ、すべてをよく混ぜ合わせる。混ざりにくいようならもう少し水を追加して。
4、2の鍋に3を入れ、塩、クミン、オレガノを少々加えて15~20分ほど加熱する。鍋底にピーナツやトウモロコシ粉が溜まりやすいので、よくかき混ぜて。少しとろみがついてきたら、皮を剥いてカットしたユカ芋を入れて一緒に煮込む。
5、ユカ芋に火が通り、スープが好みの濃度に煮詰まってきたら、最後に塩で味を調えてできあがり。仕上げに刻んだサチャクラントロやアヒ・ドゥルセ(分量外)を散らし、サルサ・デ・ココナまたはお好きなアヒを添えて召し上がれ。
【Keikoからのひとことアドバイス】
インチカピの美味しさの秘密は、なんといってもガジーナから出る濃厚なうま味。味の薄いカルドだとボリューム感のあるマニとトウモロコシ粉に負けてしまうので、手羽先や鶏ガラをたっぷり使って濃い出汁を取ってくださいね(うま味が足りないと思ったら、市販のチキンブイヨンを足してください)。
生落花生の薄皮を剥くのはちょっと面倒ですが、あとはミキサーにかけた材料をカルドに入れて煮込むだけなのでとても簡単。生落花生がなければ、無塩のローストピーナツでも大丈夫です。
ペルーのスープにサルサ・デ・アヒは欠かせませんが、中でもレモンの酸味が効いたサルサ・デ・ココナとインチカピとの相性は抜群。インチカピがアマゾン料理として定着したのは、もしかしたらこのサルサ・デ・ココナとの組み合わせが絶妙すぎたからかもしれませんね(笑)