Papa seca(パパ・セカ=乾燥芋)の煮込み料理 Carapulcra(カラプルクラ)。食べることに夢中で気が付いたら胸元にその汁が飛び散っていた・・・なんていうことから「mancha pecho(マンチャ・ペチョ=胸元のシミ)」という不名誉な、でもどこか憎めない別名まであるんです。まったくペルー人って食いしん坊なんだから~(笑)
カラプルクラの語源であるqala phurk’a(カラ・プルカ)は、アイマラ語で「カラ=石、プルカ=炭火/熾火で熱する」という意味。ボリビアやチリ北部、アルゼンチン北部には、調理の仕上げにコンロで加熱した石を投入する calapurca(カラプルカ/綴りの違いに注目!)という、なんとも大胆な具沢山スープ があるのだとか。
このカラ・プルカがスペイン人によってペルーに伝わった際、ケチュア語の影響を受けて carapulcra(カラプルクラ)になったのでは、という説もあります。確かにペルーではqala phurk’aを「熱い石で調理した煮込み」と説明するものが多く、ちょっとした混同があった可能性は高いですよね。
スペイン人によってペルー海岸部に伝えられ、黒人奴隷の子孫たちによって現在の形に変化したペルーのカラプルクラには、大きく分けてlimeña(リメーニャ)とchinchana(チンチャーナ)があり、前者はパパ・セカを、後者はフレッシュなジャガイモを使います。ただしその区別は曖昧で、チンチャーナと謳っていてもパパ・セカを使う店もちらほら。それだけパパ・セカの独特な食感が好きな人が多いんでしょうね。
リメーニャはカラプルクラとご飯で頂くのに対し、チンチャではソパ・セカを組み合わせるのがお約束。ソパ・セカはまた後日紹介するとして、今回はカラプルクラ・リメーニャを作りましょう。
【¡新食材! 】papa seca(パパ・セカ=乾燥芋)について
ジャガイモを小さくカットして天日干しにしたpapa seca(パパ・セカ=乾燥芋)は、先住民の知恵と工夫から生まれたアンデス最古の保存食のひとつ。ビタミンB1、B3、B6、およびカリウム、リン、マグネシウム、ヨードなどのミネラル成分がたっぷりです。さまざまなジャガイモで作られますが、リマで人気なのはパパ・アマリージャを使ったパパ・セカ。粒の大きさはメーカーによってまちまちです。
乾物だけあって常温保存が可能で、1年以上もつので災害対策の保存食にもぴったり。日本でも通販で簡単に入手できるので、ご家庭に常備してみてはいかがでしょうか?
【作り方】3人分
- パパ・セカ 250g
- 豚バラ肉(一部を鶏肉に置き換えてもいい) 300~400g
- タマネギのみじん切り 1/2個
- すりおろしニンニク 大1/2
- アヒ・パンカペースト 大3
- ピーナツ 60g
- カルド・デ・セルド(ポークブイヨン)、またはカルド・デ・ポヨ(チキンブイヨン) 適量
- 赤ワイン 50ml
- クローブ 2個
- シナモンスティック 1本、またはパウダー少々
- 塩コショウ、クミン、オレガノ 適量
- オプション:アチョーテ
- 付け合わせ:サルサ・クリオージャ、茹でたユカ芋
【作り方】
1、調理の前日に、フライパンで乾煎りしたパパ・セカをよく洗い、ゴミなどを取り除く。たっぷりの水に一晩浸けておく。またピーナツも事前に乾煎りして、ミキサーで粉砕しておく。
2、豚バラ肉を適当な大きさにカットする。今回は肉の存在感を出すため約3cm角にカットしたが、食べやすいようもっと小さめに切ってもいい。
3、2の豚バラ肉に塩コショウ、クミンをまぶし、油を敷いた鍋で肉の脂が染み出るようじっくり焼く。焼けたら取り出しておく。
4、アデレソを作る。3の鍋に油を足し入れ、タマネギのみじん切りとタマネギの水分を引き出すための塩ひとつまみを加えてよく炒め、タマネギが透き通ってきたらニンニクを入れて炒める。アヒ・パンカペースト、アヒ・アマリージョペーストを加えてさらに炒め、塩コショウ、クミン、オレガノを加えたらアデレソのできあがり。
5、アデレソに3の肉と赤ワインを加え、さっと混ぜ合わせる。そこに1のパパ・セカとカルド、クローブ、シナモンを加え、パパ・セカが柔らかくなるまでかき混ぜながら煮込む。カルドの量はパパ・セカが十二分にかぶるくらい(パパ・セカが水分を吸うので)。水分が足りなくなってきたら、適宜水を加えてよう。
6、パパ・セカが柔らかくなったらピーナツの粉を加え、引き続き煮込む(水分が足りなければまた水を足して)。好みの状態に煮詰まってとろみがでてきたら、クローブとシナモンスティックを取り出して塩コショウで味を調えてできあがり。
【Keikoからのひとこと】
今回は豚バラと鶏むね肉を合わせて作りました。鶏むね肉はパサつきやすいので、最初に豚肉と一緒に表面を焼き付けておき、パパ・セカが柔らかくなってから加えています。本当は鶏もも肉のほうがあうかな~と思いますが、そこは冷蔵庫と相談してください。
またペルーで頂くカラプルクラはもう少し赤味の強いものが多いのですが、それはアチョーテを加えているから。なのでペルーらしさを追求したい!という人は、アチョーテオイル(オイルにアチョーテの実を入れて色素を抽出したもの)、またはアチョーテの粉を足してください(日本でも粉末状のアチョーテが手に入ります)。
毎年2月10日は、El Día de la Carapulcra(カラプルクラの日)だそうで・・・知らなかった!なんでも『アンデス、スペイン、アフリカの文化が融合した料理であることを思い出すため、2月14日の友情の日(バレンタインデー)に近い10日に決定した』のだとか。そんなことをいったら、ペルー料理の日は全部2月14日前後に?あらあら、大変だわ(笑)