Muchame de Bonito ムチャメ・デ・ボニート

イタリア・リグリア海沿岸の名物料理 Mosciame di Delfino(ムシャメ・ディ・デルフィノ/塩漬けにしたイルカ肉の干物)。スペイン語で Muchame de Delfín(ムチャメ・デ・デルフィン)と呼ばれるこの料理はイタリア移民によってペルーに伝えられ、カリャオなどの港町に広まったといいます。

ところがペルーにおいて、ムチャメという料理はあまり一般的ではありません。それは恐らく1990年から96年にかけてイルカ漁が禁止されたことで、ムチャメを作る習慣が一時的に廃れたから。特に96年の新法では、イルカ肉を提供したレストランの営業許可を取り消すなど厳しい罰則が科されました。一時はその料理名を口にすることすら憚られたでしょうし、少なくとも “家庭の味” にはならなかったようです。

とはいえ今でも網に “偶然” かかったイルカをこっそり食べる人は後を絶ちません。ペルー北部のある港町に滞在した時、宿のオーナーが「ナイショだよ」と言いつつご馳走してくれたムチャメもイルカ肉でした。その黒々とした肉はしょっぱくて弾力があり、まるでビーフジャーキーのよう。美味しく頂いたものの、その日のクルーズで大海原を自由に泳ぐイルカの群れを見たばかりだったので、複雑な気持ちになったのは言うまでもありません。

バランコ区の「Canta Rana」や、ミラフローレス区の「Restaurante Costazul Seafood」では、イルカの代用としてマグロやカツオ、タコを使ったムチャメを頂くことができます。薄切りにしてオリーブオイルをたっぷりかけ、クリーミーなパルタ(アボカド)やトマトと一緒にクラッカーに乗せてパクリ。いやー、最高!冷えた白ワインとの相性も抜群です。

【作り方】作りやすい分量

  • カツオの背身 一節分(約300g)
  • 天然塩 100g
  • 砂糖 50g
  • ガーリックパウダー 大1/2
  • ローズマリー、オレガノ、タイム、ディル、イタリアンパセリなどお好きなハーブ 適量
  • 白ワインビネガー(酢) 塩抜きする水と同量
  • 付け合わせ:パルタ、トマト、E.V.オリーブオイル、ニンニク、ハーブ類、クラッカー

【作り方】

1、扱いやすいようカツオの背身を半分にカットし、皮と血合いを取り除く。臭みのもとになるので、血管に残った血もきれいに洗い流す。

2、塩と砂糖、ガーリックパウダー、ハーブ類を混ぜ合わせ、その約半量をカツオにまぶす。

3、2のカツオをまぶした塩ごと容器に入れ、ラップをして冷蔵庫で12~24時間寝かせる。

4、容器に溜まったドリップを捨てて容器を洗い、カツオの表面の水分もキッチンペーパーで丁寧に拭きとる。

5、新しいキッチンペーパーの上に4のカツオを乗せ、2で残った塩を全体にまぶしてペーパーで包み、再び容器に入れてラップをして冷蔵庫で寝かせる。

6、時々カツオをチェックして、キッチンペーパーが濡れていたら適宜交換する。まだカツオに塩が付着しているようならそのままで、まだ身の水分が多いのに塩が溶けきっているのようなら追加で塩を振ってもいい。

7、カツオの水分が抜けてツヤツヤになり、適度な弾力も感じられるようになったら塩漬け終了。酢水(下記参照)に浸けて表面の塩やハーブを洗い落とし、水分をよくふき取る。今回の塩漬けは72時間(3日間)でした。

8、カツオを薄くスライスし、同じく薄くスライスしたパルタやトマトと一緒に皿に盛る。オリーブオイルに刻んだニンニクとお好きなハーブを加えて全体にかけて出来上がり。クラッカーに乗せて頂こう。

【Keikoからのひとことアドバイス】

カツオに塩を振ってから12~24時間放置するだけで、驚くほどドリップが出ているはず。ドリップは臭みや腐敗のもとになるので、きれいにふき取ってから次の塩を振ってください。また新しいキッチンペーパーに包んだ(手順⑤)後、容器に網や割りばしを数本敷いてその上にカツオを置くと、乾燥も進みやすくオススメです。

また塩抜きの正しい方法が見つからなかったので、私はボウルに同量の真水と白ワインビネガーを入れて、カツオの表面に残っている塩やハーブを丁寧に洗い落とすだけにしました。これだとカツオはまだだいぶしょっぱいので、その分できるだけ薄くスライスし、付け合わせの野菜やオリーブオイルに塩を加えないようにしています。

本来は塩漬けにした肉を燻製にするようですが、リマのなんちゃって換気扇(排気ダクトがない)ではさすがに怖くて燻製ができません。燻製キットをお持ちの方は、ぜひやってみてくださいね。時間はかかるけれどとっても簡単なムチャメ、オススメです!