ペルーのスイーツ「ピカロネス」とその起源

美味しくて皆に好かれるピカロネスは、スペイン副王領時代に生まれたスイーツです。「揚げた丸いの~甘々だよ~」という昔の売り声からも、その人気がうかがえます。

ピカロネスの起源は?

ペルーの作家リカルド・パルマ(1833-1919)が、著書「ペルーの伝統」の中でこのクリオージョ(※スペイン系ペルー人の)スイーツの起源について「スペインでドーナツと呼ばれるものに似たフルーツ揚げの一種」と記しています。

別の史料によると、ピカロネスの起源はイベリア半島のブニュエロ(ドーナツ)であり、ペルーにはスペイン人の到来とともにもたらされたといいいます。スペイン人たちは、ペルー侵略の過程で自らの料理を再現しようと試みました。それらの多くは、ペルー料理の食材や調理法を取り入れた新たなレシピを生み出すきっかけになったのです。

ピカロネスもまたそのうちのひとつでした。旧大陸(※ヨーロッパ・アフリカ・アジア)由来の菓子同様生地には小麦粉を使い、カボチャやサツマイモ、アニス、塩を加えて小さなドーナツ型にした後、油をたっぷり入れた鍋で揚げます。外側がカリカリに揚がったら、中身が柔らかいうちに鍋から上げて皿に盛り、味の引き立て役として欠かせない黒糖の蜜をたっぷりかけてからいただきます。

トップレベルのピカロネス職人たちが披露するその比類なき技術については、ペルーの作家兼ジャーナリスト、アダン・フェリペ・メヒア(1896-1948)が誰よりも細かく描写しています。

「そのピカロネラ(※女性のピカロネス職人)は、まるで権勢を誇る女王のように堂々と座り、ボウルのそばに置かれたマグカップの水で片手の指を濡らします。湿った指をそろえ、ボウルからおいしそうな生地をすくい取りますが、親指だけは他の指から離したままです。その後あたかも一連の儀式をなぞるように、荘厳に、優雅に、そして威風堂々とその手を大鍋の上にかざし、空いた親指で生地の真ん中に穴を開けつつ、その生地を極めて正確な高さから煮えたぎった油の中に滑り込ませます。生地が鍋に落ちると…奇跡が起きていました!」

紫の月の味

料理研究家のセルヒオ・サパタは自著「ペルーの伝統的食文化辞典」の中で、毎年10月に行われる宗教的行事「奇跡のキリスト」とこのスイーツの間に深い関係があったと記しています。

同研究家によると、ピカロネスは17世紀以来、アンティクーチョ(※牛ハツ)やチョンチョリエス(※ホルモン焼き)のような他のクリオージャ料理と同じく、この行事の開催期間中物売りの手で商われていたようで、これは300年以上続く伝統だといいます。紫の月(※10月を指す)には、奇跡のキリストの聖画が祀られているラス・ナサレナス教会の周りで、ピカロネス職人たちがこの美味しいスイーツを売る光景が見られるでしょう。

(ソース: ペルー貿易観光促進庁/Promperú)