世界遺産の街アレキパの名物料理Ocopa Arequipeña(オコパ・アレキペーニャ)。その歴史は古く、インカ時代にまでさかのぼるといいます。
アンデスの街クスコを中心に北はコロンビア南部から、南はチリ中部とアルゼンチン西北部までの広大なエリアを支配したインカ。タワンティンスーユと呼ばれたその巨大な国には、カパックニャン(インカ道)と呼ばれる街道が隅々にまで張り巡らされていました。そのインカ道をひた走ったのがチャスキと呼ばれる飛脚です。彼らは皇帝の伝令を各地に伝えたり、地方の情勢を中央に報告するなどの重要な使命を果たしました。
1日におよそ280㎞もの距離を駆け抜けたというチャスキたちは、わずかな時間にさっと栄養補給できるよう、すりおろしたマニ(ピーナッツ)やアヒ、ハーブを入れた食糧袋を持っていました。その袋の名前が “ocopa(オコパ)” です。のちのスペイン統治時代にオコパに入っていた素材に乳製品などが加えられ、今のような形になったのだそう。オコパが料理名ではなく袋の名前だったなんて、ちょっと面白いですね。
このオコパに欠かせないのがペルー原産のマニと、huacatay(ワカタイ)というハーブです。そしてトロミ付けのクラッカーには、なぜかソーダクラッカーではなくバニラビスケットか動物ビスケット!ちょっと微妙なこだわりですが、そこはアレキパ魂を尊重したいと思います。
【¡新食材! 】hucacatay(ワカタイ)について
南米原産のキク科植物hucacatay(ワカタイ/学名:Tagetes-minuta)は、サルサを始め、パチャマンカなどのアンデス地方の料理に欠かせないハーブのひとつ。ミントとバジル、レモン、タラゴンを合わせたような独特の香りで、マニやロコトなどとの相性が抜群です。その優れた抗炎症作用と殺菌力の高さから気管支炎治療のほか、肝臓を浄化し、胆道の機能改善にも役立つといわれています。
繁殖力旺盛なワカタイは世界中に帰化しており、日本では東京都江東区深川塩崎町で発見されたことから和名を“シオザキソウ”というそう。“ブラックミント”という商品名でも流通しているようですが、シソ科のブラックペパーミント(学名:Mentha × piperita black peppermint)と混同しないようご注意くださいね。
日本ではワカタイペーストが売られています。フレッシュが理想ですが、ペーストでも問題ありません。ペースト使用の場合は油で炒めず、ミキサーに少しずつ加えながら調整してください。
【材料】2人分
- ジャガイモ 2個
- アヒ・アマリージョ 2本(またはペースト 大2)
- ワカタイの葉 20~25g
- タマネギ 1/4個
- ニンニクのすりおろし 小1/2
- マニ(ピーナッツ) 40g
- ケソ・フレスコ(カッテージチーズでも可) 50g
- バニラビスケット、または動物ビスケット 数枚(5g前後)
- エバミルク、または牛乳 50ml
- オリーブオイル 大さじ3
- レモン果汁、塩・コショウ 少々
- 付け合わせ:ゆで卵、ブラックオリーブ、レタス 適量
【作り方】
1、ジャガイモを茹で、食べやすい大きさに切っておく。ゆで卵をスライスしておく。マニをフライパンで乾煎りしておく。
2、フライパンにオリーブオイル大1を入れ、種と筋を取ってざく切りにアヒ・アマリージョとタマネギ、ニンニク、ワカタイの葉を入れて全体がしんなりするまで炒める。
3、ミキサーに2とそのほかのソースの材料を入れ、滑らかになるまで混ぜる。ほんの少しのレモン果汁を加えるとさっぱり仕上がる(入れなくても可)。
4、ジャガイモに2のソースをたっぷりかけ、レタスやゆで卵、ブラックオリーブを添えて出来上がり。
【keikoからのひとことアドバイス】
オコパを作ろうと思っていつもの八百屋さんへ。
「ワカタイある?今日、オコパ作るんだ」「オコパかい?いいねぇ。でもワカタイだけでいいのかい?ケソ・フレスコは?」「あ、それもちょうだいな」「あいよ」「バニラビスケットも少しだけ欲しいけど、うちにソーダクラッカーがあるしなぁ」「ダメだよ!バニラビスケットか動物ビスケットじゃなきゃ、あの味はでないよ!」「絶対かなぁ?」「ダメだねー」「じゃあビスケットも買うわ」「あいよ、毎度あり」
と、そんな会話がありました。そう、ワカタイにはなぜかソーダクラッカーではなく、ちょっと甘いビスケットを使うんです。確かにソーダクラッカーは塩味が強く、バニラビスケットや動物ビスケットはほんのり甘いけれど、使用する量はほんのわずか。そこまで味に違い出るとは思えないのですが、それが「本場のレシピ」なのだから仕方がありません(笑)
日本でも目玉焼きには塩か醤油か、はたまたソースかなんて議論はありますよね。うどんには七味か一味か、はたまたゆず入り唐辛子がベストなのかとか。人それぞれにこだわりがあるし、答えはひとつではありません。
そう考えるとアレキパの人たちがサルサ・ワンカイーナを考案したリマっ子に対抗すべく、ソーダクラッカーではない何かにこだわっても不思議ではありませんよね。ということで大の大人が2人して、動物ビスケットの話題で盛り上がった、というわけです。ペルーは平和だぁ。