Seco de Res セコ・デ・レス

seco(セコ)とは牛やヤギ、鶏などの肉類を使った煮込み料理のこと。作家であり料理評論家だったペルー人Rodolfo Hinostrozaは、この料理の起源が北アフリカ(モロッコ)のtajinまたはtangia(タジンorタンジーヤ)にあると述べています。

副王領時代には、多くの黒人奴隷がアフリカ大陸から新大陸に連れてこられました。彼らが持ち込んだ地中海沿岸の食材や料理は、今日のペルー料理に大きな影響を与えています。イカ州チンチャで、イタリア人が持ち込んだパスタの味付けを担当したのもアフリカ系の人々でしたしね。

ペルーとエクアドルで食べられるこの料理は、酸味のある液体で煮込むのが特徴。ペルーではチチャ・デ・ホラを、エクアドルではnaranjilla(ナランヒージャ/ナランジラ)を使います。スプーンでほぐせるほど柔らかくなるのは、時間をかけて煮込むからだけでなく、酸の働きもあったんですね。リマではres(牛肉)を使うことが多く、ペルー北部海岸エリアでは仔ヤギを使ったseco de cabrito(セコ・デ・カブリート)が有名ですが、もちろん鶏肉でも美味しく作れます。

煮豆料理と一緒にサーブされることが多いセコ・デ・レス。牛肉の旨みが溶け込んだアヒとクラントロのソースは、煮豆の単調な味にリズムを加え、それこそいくらでも食べられる魅惑の一品に変化させます。が!その魅惑に負けた結果があの立派な下腹なわけで・・・なので今回はセコ・デ・レスを主役とすべく、付け合わせは最小限に留めました。

【材料】2~3人分

  • 牛肉 500g(すね肉やばら肉、ネックなど煮込みに適した部位がベスト)
  • タマネギのみじん切り 大1/2個
  • ニンニクのすりおろし 大1
  • アヒ・アマリージョペースト 大2
  • アヒ・パンカペースト 大1
  • チチャ・デ・ホラ 100ml、またはビール90ml+リンゴ酢(ワインビネガーでも)10ml
  • クラントロ(コリアンダー) 100g
  • クラントロをミキサーにかけるための水 100ml
  • ニンジン 1/2本
  • グリーンピース 1/3カップ
  • 塩コショウ、クミン、オレガノ 少々
  • オプション:ジャガイモ
  • 付け合わせ:ご飯、サルサ・クリオージャ

【作り方】

1、牛肉を大きめにカットし、軽く塩コショウ、クミンをふって下味をつける。鍋に油を敷き、牛肉の表面を焼き、全体的に焼き色が付いたら皿に取り出しておく。もし時間があれば、肉に塩コショウ、クミンと少量のチチャ・デ・ホラ(分量外)をかけてよく揉み、一晩冷蔵庫でマリネするとなおよし。

2、アデレソを作る。1の鍋に油を適量足し、タマネギのみじん切りとタマネギの水分を引き出すための塩ひとつまみを加えて炒める。タマネギが透き通ってきたらニンニクのすりおろしを加えて炒め、次にアヒ・アマリージョペーストとアヒ・パンカペーストを入れてよく炒める。少量の塩コショウとクミン、オレガノを加えてよく混ぜ、クラントロ液を入れて全体をよく炒め合わせる。これでアデレソのできあがり。

3、2の鍋に1の牛肉を戻し(皿に肉汁が残っていたらそれもいれる)、チチャ・デ・ホラを加える。牛肉が十分浸かるくらいの水を足して煮込む。圧力鍋を使う場合は加圧15~20分(器種による)、そのまま煮込む場合は蓋をして、牛肉が柔らかくなるまで1時間~1.5時間煮込む。中火~弱火にし、時々鍋底からかき混ぜながらじっくり煮込もう。

4、肉を煮込んでいる間に野菜の準備をする。ニンジンは皮を剥いて5mm幅の輪切りにする。鍋に湯を沸かして塩少々を加え、ニンジンとグリーンピースをさっと茹でておく。ジャガイモを添える場合は、このタイミングで一緒に茹でておくといいだろう。

5、肉が柔らかくなったらニンジンとグリーンピースを加え、好みの濃度になるまで煮汁を煮詰めていく。塩コショウで味を調えたらできあがり。

【Keikoからのひとことアドバイス】

街角のレストランやメルカドの食堂でも定番メニューとして愛されるセコ・デ・レス。いつもご飯と煮豆がどーんというパターンが多いので、今回はお肉を主役にしました。圧力鍋とチチャ・デ・ホラのおかげで、お肉はトロトロ!うん、これはなかなかイケますな。

我が家は辛いもの好きなので、アヒのペーストを多めに入れています。じっくり煮込むので辛さはほとんど感じませんが、お子さんがいるご家庭なら少し減らしてもいいかもしれません。ノルテのセコ・デ・カブリートはこれにroche(ロチェ)と呼ばれるカボチャを加えて甘味とコクを足します。質のいいカブリートが手に入ったら、ぜひ作ってみたいと思います。

またクラントロが大好きな方は、追いクラントロもオススメ。あらかじめ多めに作っておいたクラントロ液の残りを仕上げに加えることで、クラントロの色と香りとより強調することができます。ただし消化不良を起こさないよう、ある程度加熱してくださいね。

逆にクラントロが苦手な方は量を減らしたり、カットトマトやトマトペーストを加えるなどしてもいいかも。ただしいずれの場合もペルーの“seco(セコ)”に仕上げたいなら、少量でいいのでチチャ・デ・ホラ、またはビール+リンゴ酢をお忘れなく。でないとただのguiso(ギソ/煮込み)になってしまいますからね。