Papa Rellena(パパ・レジェーナ)は、ラグビーボール状をしたペルー版コロッケ。ジャガイモのしっとり滑らかな食感と、豪華なフィリングのハーモニーが絶妙です。でも食べるたびに思うんですよね。「もう少し中身を減らすだけでぐっと揚げやすくなるだろうに、なんとまぁ贅沢なコロッケだこと!」
「いかに少量の油で揚げるか」に重点を置く日本と違い、常に食べ応え重視のペルー人は調理にかかる手間や時間を惜しみません。「大きいほうがいいじゃない」「具がたっぷり入っているほうが美味しいじゃない」という気持ちが、揚げにくいとか油の処理が面倒などという気持ちを凌駕するのでしょうか?(メイド文化であることも多分に影響していると思いますが)。
ペルー人が愛してやまないパパ・レジェーナ。その歴史を調べると、『1879年に勃発したチリとの戦争(太平洋戦争)で、遠征に出る兵士が移動時に持ち運びやすいよう、味付けした肉をマッシュしたジャガイモで包み、布にくるんだのが始まり』とありました。私は単にフランスのクロケット(コロッケ)を真似ただけだと思っていたので、これにはびっくり!
フランス人のペルー移住の歴史は比較的新しく、19世紀後半になってから。それでも当時は元宗主国のスペインを除き、イタリア、イギリスに次ぐ第3の勢力で、太平洋戦争の折りにはフランス人兵士もペルー軍に参加しともに戦ったそう(結局チリに負けました)。
ペルー人兵士とともに戦ったあるフランス人兵士が、「おいおい、肉やジャガイモを毎回調理してちゃあ、大変だろう?だったらこうしなよ。これなら持ち運びやすいし、次の野営地でもすぐ食べられるしさ」なんてアドバイスをしたのかしら・・・などとひとり想像しております。
命を懸けた激しい戦場にあって、簡単でありながらも美味しいものを欲した若き兵士たち。戦地で生まれたこのお弁当に敬意を表しつつ、レシピ紹介と参りましょう。
【材料】約10cm×5cmのパパ・レジェーナ4つ分
- ジャガイモ 500g
- 牛赤身肉、またはひき肉 150g
- タマネギのみじん切り 1/4個
- ニンニクのすりおろし 小1
- アヒ・パンカペースト 大1/2
- トマトペースト 大1/2
- カルド・デ・レス(ビーフコンソメ)または水 大2
- 溶き卵 1個
- 茹で卵 1個
- レーズン 25g
- ブラックオリーブ 4個
- イタリアンパセリを刻んだもの 大2
- 塩コショウ、クミン、オレガノ 適量
- 片栗粉、または小麦粉 適量
- 油 たっぷり
- 付け合わせ:サルサ・クリオージャ、サルサ・デ・アヒ
【作り方】
1、マッシュポテトを作る。ジャガイモを皮ごと茹でるかレンジで加熱し、温かいうちに皮を剥いて軽く塩コショウを振り、丁寧にマッシュする。ジャガイモが冷めたら、耳たぶくらいの硬さになるよう溶き卵を少しずつ加えてよく混ぜ合わせる。ジャガイモの種類によって水分量が違うが、使用する溶き卵の量は1/3~1/2ほど。残った溶き卵は後ほど使うので取っておくこと。
2、フィリングの材料を準備する。牛赤身肉を細かくカットする(ひき肉の場合は不要)。茹で卵を約1.5cm角になるよう粗くカットしておく。ブラックオリーブを0.5cm幅にカットしておく。レーズンに熱湯を回しかけ、水分を切っておく。
3、フライパンに油を敷き、軽く塩コショウをした2の牛肉をよく炒める。火が通ったら別皿に取り出しておく。
4、アデレソを作る。3のフライパンに少量の油を足してタマネギのみじん切りと塩ひとつまみを入れ、牛肉の旨みをこそぎ落としながらよく炒める。タマネギが透明になってきたらニンニクを入れて炒め、アヒ・パンカペーストとトマトペーストを加えてさらによく炒める。塩コショウとクミン、オレガノを加えて炒め合わせればアデレソのできあがり。
5、4のアデレソに3の牛肉を加えて炒め合わせ、レーズンとブラックオリーブ、ビーフコンソメを加えてフィリングをしっとりさせる。全体がよく混ざったら塩コショウで味を調え、イタリアンパセリとカットした茹で卵を加え、卵の黄身を潰さないようそっと混ぜ合わせる。これでフィリングのできあがり。
6、1のマッシュポテトと5のフィリングを四等分にしておく。マッシュポテト1/4を手に取って一度丁寧に丸め、それを手のひらに乗せて楕円形に広げる(このレシピの分量だとちょうど手のひらが隠れるくらい)。中央にフィリングを乗せたら両手を使ってフィリングを包み込むようにマッシュポテトの端と端を合わせ、綴じ目をきれいにくっつけながらラグビーボール状に整える。揚げる時、マッシュポテトがひび割れているとそこから爆発してしまうので、表面を滑らかに整えよう。残り3個も同様に。
7、フライパンに油を多めに入れて加熱する。6のパパ・レジェーナの表面に片栗粉を薄くまぶし、1で残しておいた溶き卵を絡めて油で揚げる。厚みがあって揚げづらいが、無理にひっくり返そうとせず、お玉やスプーンを使って油を表面にかけながら揚げると形が崩れにくい。
8、全体にきれいな焼き色がついたらパパ・レジェーナの完成。サルサ・クリオージャとお好みのアヒを添えて頂こう。
※本日のサルサ・デ・アヒ:アヒ・アマリージョ30g、タマネギ10g、ニンニク小1/2をさっと炒め、オリーブオイル大1~2を加えてミキサーへ。仕上げに刻んだ青ネギを加えてできあがり。
【keikoからのひとことアドバイス】
パパ・レジェーナはマッシュポテトの滑らかさが命。これさえいい具合に準備できたら、パン粉なしでも爆発することはまずないと思いますよ。マッシュポテトの合わせ目を丁寧に綴じ、ひび割れができないよう細心の注意を払って丸めてください。
また⑦の工程で「え?溶き卵が先じゃないの?」と思ったあなたは鋭い!実はペルー人の間でも「粉が先」と「溶き卵が先」で分かれるんですよね(中には溶き卵を使わず、粉だけまぶして揚げる人も)。
粉をまぶしてから溶き卵を絡めると、粉がはがれないので揚げカスができず、油はきれいなまま。しかも表面がふわっと、きれいに揚がります。一方、溶き卵を絡めた後に粉をまぶすと、揚げているうちに表面からはがれた粉が揚げカスになってしまい、パパ・レジェーナに付着してしまうという問題があります。ただ仕上がりは前述のものより多少パリッとするので、揚げカスを頻繁に捨てるならこれも悪くはありません。
日本人の感覚だと、“パン粉なしのコロッケ”というだけでへ~という感じなのに、“溶き卵をつけた状態で揚げる”なんてちょっと驚きですよね。一方ペルー人にとっては、日本のコロッケやトンカツのあのザクザクとした食感はとても新鮮だったようで、『〇〇 al panco』などパン粉を使って揚げていることをわざわざ強調するメニューもあります。
一口にジャガイモのコロッケといっても、国によって本当に違いますね。しっとり滑らかで豪華なフィリングが特徴のパパ・レジェーナと、ホクホク・ザクザクした食感が楽しい日本のコロッケ、あなたはどっちがお好きですか?