ペルー北東部に位置しエクアドルと国境を接するアマソナス州。同州ルヤ郡のクエラップ遺跡は、チャチャポヤス文化に属し「北のマチュピチュ」とも称されるプレインカ時代の城塞都市遺構だ。
この遺跡は1843年1月31日、チャチャポヤス地方第一審判事のフアン・クリソストモ・ニエトが地元民の案内を伴い発見したとされる。その後、チャチャポヤス文化を専攻するペルー人考古学者兼歴史学者のフェデリコ・カウフマン・ドイグがより詳細な調査を実施。遺跡が発見されてから今年で177年目になる。
難攻不落の砦
クエラップ遺跡は、アマソナス州の州都チャチャポヤスから南東へ約70km。ルヤ郡のウトゥクバンバ渓谷上流部にあるバレタ山の頂(標高3000m)に位置し、その戦略的立地がこの遺跡を難攻不落の砦たらしめている。
すべて石造りのこの砦は11~14世紀に建造されたチャチャポヤス文化の遺構で、敷地は約600mにおよび、箇所により高さ19mの城壁を有す。内部への入り口は3か所あり、砦の守りを容易にするため、ひとりずつしか通れないようそのひとつは奥に向かうほど狭くなっている。
El Torreón(塔)
遺跡北部エリア付近の上層部にある、遺跡内で最も高い約7mの建造物。砦への攻撃や侵入を防ぐため、四方を隈なく監視する見張り台として機能していたと考えられている。
El Tintero(羽根ペン用インク容器)
高さ5.5m、直径13.7mの逆円錐形が特徴のこの構造物は、天体観測施設の役目を果たしていたと考えられている。内部にはボトル型の部屋があり、チャチャポヤス文化の高位の人物を埋葬するためのチュルパ(葬塔)もしくは霊廟と推測されている。
El Castillo(城塞)
遺跡内でも特に重要とされる方形で3層構造の構造物。要人や高位の人物の住居跡と考えられている。
Templo Mayor (主神殿)
遺跡内で最も規模が大きく重要な場所のひとつ。上部直径13.5mの逆円錐台形で、内部では取り並べられた人骨を始め数多くの儀式・祭儀用供物の痕跡が見つかっており、この遺構は大型の納骨堂であったと推測される。建物の周囲からは、北部海岸地域やアヤクチョ州山間部、カハマルカ州山間部由来の供物や埋葬された人骨が出土している。
Plataforma circular(円形基壇)
遺跡南部城壁のすぐ上に位置する円形基壇は主神殿と密接な関係があり、責任のある神職が居住していたと考えられている。しかし徒党を組んだ住民による権力闘争が発生、基壇内部では多数の男性が虐殺され、その後数日間続いた大火によりクエラップの歴史は終焉を迎えたとされる。かつては円形基壇の中央に主神殿の上部および中央部同様の納骨堂があり、この悲劇はスペイン人侵略者による先住民制圧制度が確立された1570年ごろに起きたと考えられている。
Pueblo Alto(上層集落)
遺跡の北部と西部に位置し、他の地区とは壁で隔てられている。内部は3区画に整理され、入り口は北部および中央区画への1か所、ならびに基本的に居住の用に供した南部区画への1か所の計2か所に設けられていた。
Telecabina(ロープウェイ)
麓の駅から遺跡まで約4km、高低差728mを片道20分で結ぶクエラップのロープウェイでは、往路・復路共に左右の眺望が印象的なまたとない体験ができる。料金は現在往復21ソレス。
(ソース: Andina 21/01/20)