日本で絶賛開催中の 特別展 ミイラ 〜「永遠の命」を求めて の公式図録をもらった。解説はもちろん写真も充実。長時間眺めるにはちと辛い画像もあるがとても面白い。なので無理せず、少しずつ読み進めている。
子供のころはどちらかというと怖かったミイラも、偉大なるアンデス文明のゆりかごペルーで考古学に触れるうち、わりと身近な存在になったように思う。生贄にされた遺体がミイラとして発見されるケースもあるが、ペルーのミイラは祖先崇拝だけでなく故人へ愛情を感じさせるものが少なくないからかもしれない。死者に美しい衣装をまとわせ、あの世で不便を感じないよう日用品も埋葬する。支配層だけでなく、庶民の墓からも手の込んだ土器や美しい織物が出土する。死に対する恐怖より、遺族のやさしさが伝わってくる。
それにしてもミイラ誕生の過程は興味深い。極端な乾燥や低温だけでなく、湿地や地下水の中でもミイラができるとは知らなかった。また同じ祖先崇拝でも『遺体を火の上でいぶし続け、膨張すると木の棒で突き破って体液を抜く』(図録より)ところもあるそうで・・・これはちょっと想像したくない(苦笑)。自ら入定(にゅうじょう)し即身仏になる坊さんも凄まじい。学問的な探究心が高じて自らミイラになった本草学者など、理解の範囲を超えている。
なぜミイラはここまで人々を魅了するのだろう。「人生100年時代」と聞くだけでうんざりする私は、「永遠の命」の価値がイマイチ分からない。腐りかけの状態は死体として忌み嫌われるのに、完全に乾燥してしまえばミイラとしてもてはやされる。図録の解説には『聖人の不朽体(ふきゅうたい)』についても触れられている。人間が都合のいい動物なだけかもしれないし、実は真実なのかもしれない。永遠の命とはいったい何だろう。あぁやっぱり見に行きたかったな。
特別展 ミイラは東京・上野の国立科学博物館で2月24日まで開催中。ペルー・レイメバンバのミイラたちにも会える絶好のチャンス!見てない私が言うのも何だが、これはぜったい行く価値ありだ。