そろそろ危険なクリスマス

すっかりクリスマスモードと化したスーパーの店内。毎年イチオシカラーがあるのだが、今年はナチュラル感を意識してかシルバー&グリーンが目に付いた。とてもきれいだがどこか寂し気。ベタでもいいから、赤とグリーンの定番カラーでもっと温かさを演出してほしい。

そんなことを思ったのは、きっと友人の身に起こったある出来事のためだろう。久しぶりのランチなのに、どこか元気がない彼女。9月30日にビスカラ大統領が国会解散を宣言したことで「これから景気が悪くなるだろう」とか、「治安がもっと悪くなるに違いない」とかネガティブ発言を続出していた。いつもとても陽気なのに、一体どうしたのだろう。聞くとつい2週間ほど前に、強盗に襲われたらしい。

お金を下ろすため銀行の外にあるATMに並んでいると、みすぼらしい女性が『お金を恵んでください』と近づいてきたそうだ。同情した友人はその女性に何か食べさせてやろうと思い、ATMの列を離れ、銀行の角を曲がったところにあるカフェへと向かった。その角を曲がったとたん後ろから大男に羽交い絞めにされ、『カードを出せ、暗証番号を教えろ』と耳元で脅されたそうだ。腰には拳銃が突き付けられていたという。テロ時代を生き延びた彼女は、本物の銃の重さを知っている。これはもうダメだと思ってカードを渡し、暗証番号も教えた。さっきの女性ももちろんグルで、怯える友人をニマニマ眺めていたそうだ。

「彼らは車ですぐ去っていったわ。でも私は動けなくて、そこへ座り込んでしまったの。たくさん人がいたのに誰も助けてくれなかった。なんとか気を取り直して、すぐ銀行へ行ったのよ。でも窓口のセニョリータは『今他の方をアテンド中なので待ってください』って!!信じられる?こっちがどれだけ慌てても知らんふりで、10分も待たされたわ。でね、やっと窓口に行ったら『すみません、5分前に(あなたの残高は)すべて引き出されています』って。しかも『なぜすぐ電話しなかったんですか?』って。もうあんな銀行は解約よ!」

・・・言葉もない。

“余計な事をせず、最初から小銭をやればよかったのに” とか “嘘の暗証番号を言えばよかったのに” とか、そういうことは言わないで欲しい。食事を与えようと思ったのは彼女の優しさだし、暗証番号がウソだってばれたらその場で殺される可能性だってある。

会計時、彼女はふくよかな胸とお腹の間にしまい込んでいたホカホカのクレジットカードで支払いをした。「財布に貴重品を入れておくのは怖いから」と、そして最後に「残念だけど、もう貧しい人を助ける気はないわ」と。

貧しい人を救うはずの善意が必要な人に届かず、あまつさえ心優しき人を危険にさらすなんて。相変わらずペルーは好きなのだが、最近怖いことが多すぎる。今年のクリスマスシーズンはいつも以上に緊張しそう。皆様も重々お気をつけて。