ミラフローレスでデロリアン

三が日のある日、ミラフローレスでデロリアンに遭遇した。車内にはタイムサーキットやフラックス・キャパシター(次元転移装置)もあり、なかなか気合が入っている。

車の汚れ具合と完成度の低さと、リアガラスに貼られたペルーサッカー連盟のシールがなんともいえずラティーノだ。そもそも車種が違うところが適当過ぎてよろしい。こういう改造車が新市街のメインストリートを颯爽と走れるなんて、ペルーの交通警察は夢を追いかけるものに優しいんだね!いやー、新年早々、良いものを見た。

ミラフローレスから帰るため、コンビに乗った。空いていた最前列の優先座席に座ったら、隣にいた細くてちいちゃなおばあちゃんがニコニコと挨拶をしてくれた。おばあちゃんは対面(運転席の後ろ)に座っていた若い女の子に何やら話しかけていたので、最初は彼女の孫かと思ったけれどそうではないらしい。ただ人とおしゃべりがしたいだけなのだろう、おばあちゃんは一人で延々と話している。普通なら適当に話題をすり替え、携帯画面に集中したいところだろうが、その女の子は嫌な顔一つせず、ただおばあちゃんの話をニコニコと聞いてあげていた。

しばらくすると、おばあちゃんは私にも声をかけてきた。ただ声が小さい上に車内がうるさくて、あまりよく聞こえない。「何歳?」みたいに聞こえたので「え?私の年?」と尋ねたら、「あなたのはどうでもいいのよ、私はいくつだと思う?ってきいたの。聞いた人はみんなびっくりするのよ」というではないか。それじゃあ聞いてあげましょうか・・・と思ったら、こちらの反応を見る前に「なんと93歳なの!」と誇らしげに教えてくれた。同じように声をかけられた女の子は微笑みながら親指を立て、「いいね!」のしぐさをしてみせた。それを見たおばあちゃんは、とーっても嬉しそうだ。

おばあちゃんが指定した信号の前でコンビは停車。バスを降りようとしたら、周囲の人やコブラドールが手を差し伸べみんなで彼女をサポートした。安全に降り切ったおばあちゃんを確認してから、コンビを発車させる運転手。日常の何気ない風景、でも何ともいえず温かい。うんうん、新年早々、良いものを見た。今年は良い年になりそうだ。