GSM方式のモバイルキャリアによるグローバル団体GSMA(GSM協会)は、ペルー政府が承認した立法政令第1338号「モバイル端末装置国家登録法」が利用者にとってマイナスになる恐れがあるとして懸念を表明した。
同政令は、ペルーにおける携帯電話の「ホワイトリスト(註: ブラックリストの反意)」作成を命じるもので、リストに未登録の
携帯電話ならびにIMEI(携帯電話の識別番号)が無効な携帯電話は使用不能となり、通信サービスが中断される。
GSMAは、局地的に有効とされる“ホワイトリスト”の適用に関し国際レベルでの実証例はなく、逆に消費財の自由な流通やサービスの品質、消費者の所有権に影響を及ぼす可能性があると説明。
「“ホワイトリスト”あるいはモバイル機器登録簿は、盗品報告を受けた携帯端末からなるブラックリストに対し排他的に機能
するものの、端末盗難防止のために考案されたものではない」としている。
GSMAのラテンアメリカ地域幹部セバスティアン・カベージョ氏は、携帯電話の盗難に対し100か国以上のモバイル産業界ならびに各国政府と行動を共にしてきたことを振り返り、「ホワイトリストの適用が行われている国は数えるほどしかなく、盗難の数を減らす効果の確証はない」と述べた。
カベージョ氏はさらに、“ホワイトリスト”あるいはモバイル機器・利用者登録簿が端末盗難対策に有効ではないとする理由について次のように説明した。
1. モバイル端末の自由な流通を阻害する。ほとんどの端末は世界中で使えるように作られており、ローミングサービスや消費財の自由な流通を妨げ、自由貿易に影響を及ぼす。
2. 携帯電話とSIMカード(あるいは携帯回線)の連関において、GSM標準が示すすべての通信規格に相反すること。利用者によるひとつ以上の回線の利用、あるいは自身の端末の(他人への)貸与は一般的に行われ、それら(の行為)はテクノロジー浸透の一端を担っており、サービスの不適切な利用にはあたらない。
3. “ホワイトリスト”既登録者照合ならびにサービス利用者と機器使用者相互の照合(手続き)は、携帯電話利用開始までの待ち時間を増やし、サービスの質の低下と利用者の不評を招く可能性がある。
4. ラテンアメリカを始めとする世界各国には、IMEIの変更や複製に関する一連の問題が存在する。複製されたIMEIをすべて使用不能にしてしまうと、複製発覚防止措置が施された端末をそれと知らず正規に購入したと思しき顧客のサービスにまで影響を及ぼす。
5. “ホワイトリスト”と携帯電話盗難件数の減少における明確な相関関係を絶対的に裏付けるものはない。
6. 利用者のプライバシーを侵害する。
GSMAはモバイル端末とSIMカードの同一名義による登録義務規程を例に挙げ、同立法政令には経験的な裏付けを欠く要素も加味されていると指摘し、国内の利用者にマイナスの影響を及ぼす可能性があると説明。
例えば、盗難により通話サービスの中断を余儀なくされた利用者がその後自己名義の別のSIMカードを有効化しようしても、新しい携帯端末を買う余裕がない場合に(今まで通り)他人名義の端末を借りることができなくなる。
「“相互交換抑止”と名付けられたこのシステムではそれ(端末の借り受け)が不可能になる。つまり、携帯電話盗難の被害者は同時に規則そのものの被害も被ることになるかもしれない」とカベージョ氏は述べた。
GSMAは基本的に、IMEI偽造の処罰のみならず、増加傾向にある盗難携帯由来部品の不正販売や違法取引をも罰することでより効果的に規則の機能が発揮されると考え、盗難携帯抜き打ち一斉摘発の実施にあたり警察や監査官が必要な権限を持つべきとしている。
「ペルー政府の措置は携帯電話盗難対策上効果がなく、利用者に重大な影響をもたらすだろうと我々は考えている。サービスへの影響はもとより、利用者の責任ではなく、携帯電話を複製する不実な輩のために利用者自身の機器が使用不能になると思われる」とカベージョ氏は結んだ。
(ソース: Gestión 23/02/17)