ペルーの国石、のつづき

先日、日本の国石、ペルーの国石というブログを書いた。ペルーではエメラルドは産出されないし、エメラルドが付いたインカの宝飾品なんて見たことないぞー!という話である。

とはいえ、私の知識などたかが知れている。もうブログに書いちゃったけど、もし違ったら修正せねばなるまい・・・と思い、義井豊さんにメールしてみた。日本人写真家としてアンデス文明の出土品を最も多く見続けてきた人だから、その膨大な記憶の中に何かあったかな~と思ったのだ。

すると「島田さんは鉱物収集が趣味なので、彼に聞いてみましょうか?」とお返事が。いやいや、ただのブログネタですからそこまでして頂かなくても!と慌てたが、「もうメールしました」と。はやっ!どちらも多忙な人たちなのに、なんというかもう、本当にすみません。

南イリノイ大学人類学科教授にして、シカン発掘の第一人者である島田泉先生。その有難いお返事によると、先生が1991年に発掘したワカ・ロロの東墳墓から出土した黄金仮面(トップ画像)の目の虹彩はアンバー(琥珀)、瞳孔は緑色のエメラルドであるとのこと(このエメラルドは恐らく、コロンビアのムーソ鉱山から採取されたものであろうとも)。他にも涙を緑のエメラルドで表現したシカンの仮面があるらしく、先生は「緑のエメラルドは水を表現する為ではないか」と考えているらしい。いずれにせよ、ペルーでエメラルドは産出されないとの話だ。

一方トルコ石とクリソコラについて。ワカ・ロロの東墳墓からはトルコ石のビーズが大量に出土しているらしく、ペルーにトルコ石がまったくないわけではないそうだ。しかし質はあまり良くないらしい。またトルコ石の色は空色に近いものや、少し緑っぽいものもあるが、綺麗な青い石は方ソーダ石(sodalita/ソーダライト)であり、モチェやシカンの宝飾品に多用されているという。あれ?じゃクリソコラはどこにいったの?

先生曰く、「トルコ石とクリソコラの区別は素人では簡単にできません。X線回折分析が必要です」「方ソーダ石をラピスラズリと間違って言う考古学者は多いです」と。この辺りはもう鉱物学の範囲なのだろう。島田先生のように石の種類まできちんと調べる人もいれば、見た目でぱっと判断してしまう考古学者もいるということだ。

「コロンビアが世界一のエメラルドの産地ですから、ほかにエメラルドが使われた古代アンデス文明の宝飾作品があるなら、ボゴタの黄金博物館にあると思います」と島田先生。結局インカの宝飾品にエメラルドがあったかどうかははっきりしないが、少なくとも先生の記憶にはないようだし、前回のブログは修正する必要はなさそうだ(ほっ)。

最後にずばり、「オパールの装飾作品は知りません」と。はい、ありがとうございます!ということで今回もまた、大変勉強になりました。義井さん、島田先生、お忙しい中ありがとうございました!