治安問題などの緊急案件に対処するため、クチンスキ政権が授権法の成立を求めている。その草案の中で、移民政策の抜本的な改正の必要性を訴えていることがわかった。すでに収容限界を超えている国内刑務所の状況を改善するために、外国人収監者を本国に送還すべきというのだ。
強制送還された囚人は罪を許されるわけではなく、本国で刑期を全うしてもらうとのこと。外国人犯罪者の多くは麻薬関係だそうだが、麻薬犯罪は即死刑なんて国だったらどうなるのかしら?
その記事の見出しには「不法滞在者25万人」とあった。ペルー人口の4倍を抱える日本ですらその数は6万3000人程度というから、相当インパクトのある数字だ。「刑務所が満杯なのは外国人受刑者が多いから」「不法滞在者(外国人)が25万人もいるから」と言われたら、そりゃ誰でも法改正が必要だと思うだろう。授権法を認めよという流れを後押しするかもしれない。
でも国内収監者8万人のうち、外国人はたかだか1900人。彼らを追い出したからって、あの飽和状態が緩和するわけがない。いくら自国民とはいえ、犯罪者を喜んで迎える国があるとは思えないし、国境にポンと外国人を捨てるような真似を国際社会(人権団体)が許すわけがない。だいたい「それなら我が国のペルー人収監者も引き取るべき」なんて言われたらどうするの?1900人追い出して1万人戻ってきた、なんて目も当てられない。
確かに外国人犯罪は増えているけれど、それより先に圧倒的な数の自国民犯罪者を何とかすべき。刑務所が満杯なら、新しい刑務所を増やせばいいだけのことだ。25万人の不法滞在者だって、その多くはすでにインフォーマルとしてこの国の経済を支える存在になっているだろう。
ペルーの治安問題はペルー人自身の問題。外国人を追い出だして解決なんて移民国家として恥ずべき行為だ。これは単なる外国人いぢめ。そこをしっかり突っ込んでくれる国会議員がいることを心から願う。