ペルーで緊急手術 その1

先日、だんなが緊急手術を受けた。病名は伏せるがお腹の中の病気だ。あ、でもどうぞご心配なく。すっかり完治しております。これは私の備忘録。

ある夜中、だんなが突然苦しみだした。トイレとベッドを往復するも、時にはあまりの激痛に廊下で転げまわるような状況だった。ここで私は救急車を呼ぶべきだったし、他の人なら当然そうしただろう。ところが彼は痛みや熱に対しめっぽう我慢強い上に、大の病院嫌いである。こっちもつい「食あたりかな、明日には落ち着くかな・・・」などと寝ぼけた希望を抱いてしまった。まんじりともしないまま、朝を迎えた。

翌日。相変わらず具体的な症状を言わないだんなは、とりあえず寝ていたいという。胃の辺りを抑えていたので胃腸薬を飲ませたが、一向に回復しなかった。高熱も続いていた。38度台なら自然治癒力で治す主義のだんなだが、すでに39度を越していた。このままじゃ熱で脳細胞が破壊される!と、超強力解熱剤を服用させる。以前私がインフルエンザになった時に処方されたもので、39度台の熱が一瞬で下がるという恐ろしい薬だ。

それでも熱は下がらなかった。こりゃいよいよ危ないと、翌日やっと病院へ。救急外来の窓口で症状を伝え、診察を待つ。週末にもかかわらず、救急外来は大勢の患者が溢れていた。ペルー人は単なる風邪でも急患で来るから、本当に急を要する人には災難だ。その上、交通事故患者まで担ぎ込まれてきた。幸いなことに血だらけの人はおらず、唯一騒いでいたのは車椅子に乗せられたおばちゃんだけ。まるでこの世の終わりを見てきたかのように嘆き、あそこが痛い、ここが痛いと訴えるおばちゃん。一方だんなはと言えば、1人でじっと痛みに耐えたままだ。日秘文化の違いと言えばそれまでだが、この時ばかりは彼にもペルー人を見習ってほしいと思ったのは言うまでもない。

そうこうしているうちに、だんなは本当にぐったりしてしまった。うわ~ん!看護婦を捕まえては「もう死ぬ、もう死ぬ、早く診ろ!」と急かすのだが、「はいはい、他の患者もいるからね」と取り合ってくれない。それでも諦めず、何度も窓口に食い下がる。声のデカい人が優遇されるペルーでは、とにかく主張しなければならない。でもみんなが主張する救急で、一体どうすりゃいいのだ???そんなこんなで、車椅子に座らされたまま1時間が経過。この段階で手遅れになる人もいるんだろうなぁ。アーメン。

やーっと診察室に入ることができた。ベッドに寝かされ、大量の抗生物質を点滴される。薬のお蔭で少し落ち着いたようだが、一体何を点滴してるのかすら分からず、本当に怖い。

医者がやってきた。「どーしましたー」「どこがいたいですかー」「痛みはいつからですかー」「熱はー」「昨日の食事はー」と言いつつ、補聴器を当てたり触診したりして、問診表に何やら記述し、去っていく。またしばらくすると他の医者が来て同じことをし、去っていく。誰かが来るたびに同じ質問をして、「ここを押すと痛いですか?」と腹を押し、その度にだんなは「ぐぇぇ」。誤診を避けるためかもしれないが、4人も5人も来ることないだろー!

しばらくするとまた医者が来て、「これからさらに詳しい検査をしなければなりませんが、可能性としてこれらのことが考えられます」と口早に説明しだした。一言も聞き逃すまいと身構えたが、私自身も相当パニクッていたのだろう、単語が1つも頭に入ってこない。「分かりますか?」と聞かれ、「分かりません」と直球で答える。私があまりに不甲斐ないため、だんなが痛みを我慢しつつ応対した。それで分かったのは「大変危険な状態なので、これから緊急手術を行います」ということだった。ぎゃー!