マリネラをこよなく愛する絵里さんが出場するという、Concurso “Cesar Zapata Espinoza” 2016を見に行ってきた。マリネラ界5指に入る有力アカデミー主宰の大きな大会だ。今回の見どころは振付や衣装に和のエッセンスを取り入れた創作マリネラ、Marinera Fusión Peruano-Japonesa。本邦初公開だ。
Seniorの部、予選。パートナーのアンヘルと絵里さんのペアが入ってきた。和=恥じらいということなのだろう、両手で顔を覆うようにしている。女性が主役のマリネラでは、女王様然とした態度で入場するのが当然。なのになんと独創的なことか!近くで見ると質感の違いが少々気になった浴衣とマリネラ用スカートの組み合わせも、離れて見るとなんら違和感がない。いや、ピンク色の生地がほんのり透けて見えて愛らしいくらいだ。
ノルテーニャらしい大胆な動きの中に、日舞のような手の動きや、首をかしげて会釈するようなしぐさなど、和な振り付けが散りばめらえている。それらが自然に見えるから不思議だ。袂とスカートが揺れる様子など、蝶々みたいでとても可愛い。意外性の連続に、思わず引き込まれてしまった。
このマリネラ・ハポネサは、パートナーを務めるアンヘルの奥さん(彼女もマリネラ・ダンサー)が、「日本人のあなたにしかできない踊りをしてみたら?」と提案してくれたのがきっかけなんだそうだ。マリネラ・ノルテーニャの世界は、伝統を重んじる雰囲気が強い。そんな中で、「面白そう!」と素直に受け止められる絵里さんは凄いと思う。
とは言え、表現に関しては、まだまだ試行錯誤中だ。たとえばお辞儀。日本の伝統や文化を表現する打ってつけの所作だが、マリネラで顔を下に向けるのはどうしてもマイナスになる。でもコンクール終了後に、「松村健さんから素敵なアドバイスを貰った」と言っていた。ということで、次回はもっと進化しているに違いない。
「コンクールで順位を競うのもいいけど、好きなように踊るのだっていいんです。コンクールは審査員の好みで評価されるから、1人でも批判的な人がいたら上位に入るのは難しい。でも今回はセミファイナルに残ったでしょ、上出来ですね」と健さん。マリネラの審査員を務めた唯一の外国人である彼の言葉は、絵里さんに更なるパワーを与えることだろう。
人とちょっと変わったことをするのは意外と簡単。ただそれを本物にするのは、伝統を守り続けるより難しい。それに敢えてチャレンジしている絵里さんを応援します。マリネラ・ハポネサをぜひ極めて頂下さいね!