気候変動とリマの屋根

数日前、我がアパートの吹き抜けに屋根がついた。ここ数年、海岸砂漠気候のリマに雨が降るようになったからだ。

もともと雨が降らない当地では、屋根は平らと相場が決まっている。部屋の天井=屋根なら建築費は浮くし、いつでも建て増しができるからだ。だが排水溝や雨樋もないから、ちょっとまとまった雨が降るとさあ大変!屋上がプールのようになるか、吹き込んだ雨で床が水浸しになってしまうのである。

屋根といっても、高床式の木枠にプラスチック板を載せただけのシンプルなものだ。日本のような台風やゲリラ豪雨はないので、今のところこれで十分である。太陽光が遮られて室内が暗くなるのではと心配したが、さほど影響はない。これで共有部分が水浸しになることもなく、門番くんも「雨の後始末をしなくて済む」と喜んでいた。

ところでこのプラスチック屋根は、もう一つ意外な効果を発揮してくれた。いつも大声で話す4階住人が、わずかながら声のトーンを抑えるようになのだ。

解放感のある吹き抜けだが、四方の壁に音が反響するためか、他人の声がよく聞こえるというデメリットがある。特に4階住人はもともと声が大きく、夫婦喧嘩の内容まで分かってしまうほどだった。ところがプラスチック板で天井が塞がれたことで、ヤツ自身が板に反射した自分の声を聞くようになったのだろう(たぶん)。もちろん今も相変わらず煩いが、ほんの少しでもトーンダウンしてくれればそれに越したことはない。

この数年の気候変動は、ペルー人には衝撃的だろう。なんせ “屋根” が必要になってきたのだから。よく見ると、最近は雨樋のあるアパートも増えてきた。昔はムシロで四面を囲えば不法占拠できた人たちも、天井用にもう一枚必要になってしまった。あとは庇や勾配を勉強して欲しいが、それは次の段階か。もう一つ言うなら、工事の後、ゴミ(写真右上の透明な紐!)を残していくのは止めて頂きたい。なぜか完璧にはできない人たちである。