MNAAHPの所蔵品 大半がパチャカマックの新博物館へ

リマ市プエブロリブレ区の国立考古学人類学歴史学博物館(MNAAHP)の所蔵品が、リマ南部パチャカマック区に建設予定の新ペルー国立博物館に移される模様だ。

文化相ディアナ・アルバレスは、ラ・レプブリカ紙の取材に対し新博物館に移送される予定の所蔵品目録作成に着手したと回答、作業にはおよそ6か月を要するという。

現在プエブロリブレでは金属、土器、織物や遺骸など30万点におよぶ考古学的遺物を所蔵しているが、博物館で展示されている品はそのうち1200点にすぎない。

またこれらの所蔵品は非常にデリケートなため、移送は3年がかりになると予想されており、初回移送分は1割程度になる模様。移送作業にあたり、文化省は移送プロセスの受託と専門家チームの雇用に係る合意文書をユネスコと締結する予定だ。

MNAAHPの文化財所蔵責任者によると、建物が古く一部構造が不安定になっており、展示スペースも足りないため、文化財を展示するには不十分なことが移送の理由だという。文化相は、新博物館には所蔵品の湿度や温度を完璧に保つ特別な倉庫が造られる予定と説明した。

新博物館は建物の60%が地下構造となり、文化財の保管庫や研究センターに充てられる。残り40%の地上部分は展示スペースになる。国立博物館(サンボルハ区)の文化財も同様にパチャカマックの新博物館へ移される。

移送後も現行の2博物館は存続する模様で、文化省は、インカ期、プレインカ期、スペイン征服期、コロニアル期、共和国期、移民期におけるペルー史の変遷について知識を深めるための博物館学のような計画を立案中という。

国立博物館はペルー文化の中枢としてその機能を現代に特化して存続する。同省副大臣は、2021年の共和国建国200周年に向け、これら3か所の異なる博物館を統合した新しい形の歴史伝承が狙いと述べた。

一方、MNAAHPで働く国立文化研究所統一労働者組合のメンバーは、パチャカマックの環境が文化財の保管には不向きであり、所蔵品を傷める恐れがあるとして移送には反対している。

同博物館に勤める考古学者のパコ・メリーノは、「文化財の最大の敵は湿気、塩分、ホコリ」とし、新博物館は海に近いことから、地下保管庫所蔵品の湿気や塩分による損傷を危惧する。同じく考古学者のエルバ・マンリケも、来館者が訪れにくくなるであろう新博物館のロケーションに疑問を呈している。

MNAAHPから考古学の部分を除いてしまうとコロニアル期と共和国期の展示物しか残らず、博物館に消滅を宣告することになる、と両者は説明する。メリーノは、「展示物が非常に乏しく、つまらない博物館になってしまうだろう」と述べた。

彼ら考古学者たちの思想は、1945年にMNAAHPを創設したフリオ・C・テーヨの遺した収蔵品を保存していくことにある。「新博物館の建設ではなく、収蔵品を奪われることに反対しているのだ」とは彼らの弁だ。

著名な考古学者ルイス・ルンブレラスは、ペルーは大規模な国立博物館を持つ時期に来ていると話す。観光のみを考えるのではなく、その建設に国民のアイデンティティを投影するためだ。

この試みは1822年以来歴代政府によって先送りされ続けてきた。「我々のコロニアル期、共和国期に関し、まだ博物館には展示されていない部分がある」と同氏は付け加えた。

パチャカマックの新博物館は、できる限り良好なコンディションで建設されなければならず、その判定を保証するための技術的な調査が必要、とルンブレラスは念を押す。

考古学者ウォルター・アルバの意見もルンブレラスと同様だが、アルバは新博物館の建設前に文化省による場所の再評価が必要と指摘する。パチャカマックは来館者にとって遠く、ともすれば移動に2時間を要するからだ。この点から、アルバは大衆向け博物館としてより市街中心部に近い場所への建設を勧告した。

来館者の移動に便宜を図るため、文化省はリマメトロ電鉄の南部延伸を検討しているという。管轄の交通通信省では、当件は未だ計画段階。

(ソース: La República 01/06/15)