取材先の子供がスイミングスクールに行くというので、同行させてもらった。スクールといっても、自宅のプールで近所の子供を泳がせるだけの、無許可の私設プールだ。
この日、小学校低学年の子供たちを指導したのは、なんと14歳の少女だった。本当の先生は少女の母親なのだが、「じゃ、後はよろしくね!」と出かけてしまった(写真右奥のセニョーラ)。個人宅のプールといっても一番深いところは1.9mあり、習いに来ている子供たちは、まだ誰もまともに泳げない。付き添いのお婆ちゃんはいたが、敏捷性は望めないだろう。普段適当な私ですら「これでええんか?」と思ったが、少女はまったく臆することなく、ビシビシと指導していた。
まだやっと水に慣れ始めたばかりの子供たちは、水面にぷかりと浮かぶことができない。少女が身体を支えてやっても、怖くて力が入るのだろう、腰は沈むし、顔はこわばってる。見ているほうがドキドキする。お嬢ちゃん、支えるならもっとしっかり!それじゃ、その子が沈んじゃうよ~!
そんな私の視線を見事に交わし、大人顔負けのセリフで子供たちを導く少女。「ほ~ら、もっとリラックスして!水は怖くないわ。まるで空に浮いているように~、天国にいるように~、リラ~ックス!さぁ、私を信じて!」・・・信じてと言われてもなぁ(苦笑)
クラスが終わった後、少女に「教えるの、上手だね」と声をかけたら、「私は3歳からママに水泳を教わっているの。いつもママのアシスタントをしているわ。だからこれくらい当然よ!」と自信満々に言われてしまった。この家の主人である少女の祖母は、「毎晩漂白剤をたっぷり入れてるから、水もきれいなもんだよ」とのたまわれた。いろんなことを突っ込みたかったが、子供を通わせているセニョーラがそばにいたので、それはぐっと我慢した。ペルーでは、真実を知らないほうがいいことが多い。
「万が一」を想像するのが苦手な人たちだから、こっちが心配してしまうけど、なんだかんだとこれで上手くいくんだろうな。準備体操と称して、プールの回りを何周も走らせるのだけは止めたほうがいいと思うけど、ラジオ体操がない国だから仕方がないしね。とにかくどうか無事故で、楽しいクラスを。そんなペルー的スイミングスクールでした。