リマの老舗日本料理店「Restaurant Fuji(レストラン・フジ)」。本格的な日本料理を提供する店としてはペルーで最も古く、少なくとも在秘日本人でその名を知らぬ者はいないだろう象徴的な店だ。先日、その開店40周年を記念した祝賀パーティーが盛大に催された。大使館や日系人協会、在秘日本企業の社長たちや在住者のお歴々が大勢集まり、その長年の功績を讃えた。
1960年~1970年代にかけて、日本企業によるペルー投資が活発化した時代がある。その気運を巧みにつかみ、1973年4月1日リマに日本料理店をオープンさせたのが深澤宗昭氏だ。「ペルーで本当の日本料理を提供したい」と心に決めた深澤氏は、妥協することなく日本伝統の技を伝え続けてきた。在秘日本人はもとより、本物を求めるペルー人グルメに支持され続けた結果が、この40周年祝賀会という良き日に繋がったことは言うまでもない。
日本人が外国で日本料理店を営み続けるためには、どれほどの苦労があったろう。深澤氏の語るかつてのペルーは、私が知るものとは全く違う厳しい世界。リマの都市化と貧困問題の発生、80年代からのテロリズム、フジモリ政権誕生とテロとの戦い、フジモリ失脚、そして今。文字に落とすのは簡単だが、その時代を生き抜くことは容易ではない。壮絶な体験もあったろう。それすら笑い話にできる懐の深さ、この度量の大きさに救われた日本人は数知れない。
ここに暮らす者はもちろん、いつかはペルーを離れてしまう企業人や旅行者も、リマに戻れる場所があるというのは嬉しいし、何より心強いのではないだろうか。何年たっても「おぅ、また来たか!」と笑顔で迎えてくれるその心地よさ。鮮度抜群の寿司や刺し身、フジ特製ピスコが五臓六腑に沁みわたる。そんな最高のひとときが、ここペルーで体験できる幸せ!
深澤宗昭氏とご家族へ。40周年本当におめでとうございます。レストラン・フジの末永い繁栄を心からお祈り申し上げます。