空港タクシーのおっちゃんとの会話

リマのホルヘ・チャベス空港でのこと。いつも利用する某空港タクシーのカウンターで、空港→スルコまでの運賃S/.55を支払をしようと思ったら、「直接この運転手に払ってくれ」と言われてしまった。

うちに到着してからの金銭トラブルは避けたいから、本当はカウンターで支払って領収書をもらいたかった。けど運転手の人柄がよさそうだったので、まあいいやと従った。

さてその運転手さん。運転は丁寧だし順調な滑り出しだった。なのに走り出してしばらくしたら、「これからセントロのガソリンスタンでガソリンを入れたい」と言うではないか。ガソリンがなくなるまでぎりぎり運転して、次に乗った客の支払い分だけガソリンを足す運転手は少なくない。でも空港タクシーでは初めて!

あんたたち、一般の流しのタクシーよりサービスがまともなのがウリじゃないの?彼はスタンドの子に55ソレス分のガソリンを入れるよう注文すると、その代金を当然のごとく私に要求してきた。
彼がスタンドの子に求めたレシートは、factura(請求書・税還付申告に使用可)だった。

「今払うのはいいけど、これっきりだからね!私は2倍は払わないからね!」と言ったら、その運転手は「もちろんです!」と胸を張って答えた。「本当に?」と食い下がると、「大丈夫ですよ。私はそんなトラブルでこの仕事を失いたくないですから」と大笑いする。そして、「そういえば、こんな面白い話があるんですよ」と知り合いのタクシー運転手の話を始めた。

ある夜、その知り合いの運転手さんは泥酔状態の客を拾った。「お客さん、どちらまで?」「あ~、●●だぁ~」「じゃあ5ソレスですよ」「あ~、それでいいよ~」その後客は眠ってしまったが、とりあえず指定された場所まで車を走らせたそうだ。

目的地に着いた時もその客は爆睡していた。「お客さん、着きましたよ!」と無理やり起こすと、客はこう尋ねた。「う~いっ、いくらだったっけ?」「5ソレスですよ」「おっしゃっ!ほれ、5ソレス」「はい、毎度あり~」でも5ソレス払った客はまたそのまま眠ってしまい、何度起こしてもなかなか目を覚まさなかったという。

深夜で特に急ぐ用事もなし、しばらく様子を見ていたそうだが、それでも起きる気配がないので、仕方なく無理やり身体をゆすって起こした。「お客さん、着きましたよ!」無理やり起こされた客はこう尋ねた。「う~いっ、いくらだっけ?」「5ソレスですよ」「おっしゃ!ほれ、5ソレス」「はい、毎度あり~」ってことで、その酔っ払いは運賃を2倍払ったという。

「それからあいつは、酔っ払いの客ばかり拾おうとするんですよ」と運転手さん。危ないねぇ、ただの酔っ払いか薬の常習犯か分からないのに?そんな話から、いかに流しのタクシーが危険か、
自分の仕事(空港タクシー運転手)が安定しているかという話になった。安定はしているが、結構大変な仕事だと思った。