「流しのタクシーってのは、そりゃ大変ですよ。収入も安定してないし、それに危ないですしね」
空港タクシーの運転手さんは、5ソレス儲けて喜んでいる知人を心配しながらそう言った。「みんな、あなたみたいな空港タクシーの仕事ができればいいのにね。この仕事に就くのは難しいの?ねぇ、いくらぐらい稼ぐの?」単刀直入ですみません。でも運転手さんはさほど嫌がりもせず、自分の仕事について話してくれた。
「今は景気もよくて、他の仕事がたくさんあるからそれ程でもないですが、以前はやはりこの仕事は人気でしたねぇ。試験はないんですよ、基本は面接です。もちろん事故歴があるとダメですが。あと、自分の車も用意しなければいけません」
あら!これ、会社のじゃなくて運転手さんの車?じゃあ、もしかして社員じゃないの?
「面接が通ったら、契約金として年間2200ドルを払います。これは毎年更新です」そっか、専属運転手としての権利を買ってるわけね。それにしても、契約金2200ドルって高くない?(この国の最低賃金は750ソレス=約200ドルです)
「それだけじゃないですよ、セニョリータ。月々の稼ぎから、契約で決められた割合(%)のお金を会社に納めなければなりません」
えー?なんか随分色々取られるのねぇ。それでもこの仕事はオイシイの?
「そりゃ・・・まあね。それにお客さんが強盗だってこともないですしね。働く時間も自分で決められるからいいですよ。例えば私はお客さんを送った後、自宅に帰って昼飯を食べて少し休みます。で、また夕方5時か6時くらいに空港に向かう予定です。だいたい夜中の1時くらいまで働きますからね。少し休んでおかないと」
リマのホルヘ・チャベス空港のアメリカ便は、到着が遅いもんねぇ。それにしても、会社は楽して儲けてるわね。
「いやいや、会社も大変ですよ。私たちから集めた金から、また決まった%を空港側に支払うんですですから。だいたい月に180,000ソレス(約650万円)くらい払ってるんじゃないかな」あらあら、空港側はこのタクシー会社に畳一枚ほどのスペースしか貸してないってのに?それこそ本当に楽して儲けているのね。強いものが弱いものから金を巻き上げる図が目に浮かぶわ。
あ、そういえば空港を出る時、何かチェックをしている男性がいたわね。私の名前を書いた紙を彼に渡していたけど、あれは何?
「あれは空港側のコントロールですよ。何号車が何時にどんなお客さんをどこまで運ぶか、チェックしてるんです。だから私たち運転手も会社も、空港からは逃げられないんですよ」
逃げられないねぇ・・・。じゃあ、行先を偽ったら?例えばスルコまでなら55ソレスだけど、もっと近い区だったら、35ソレスとか40ソレスでしょ?その分あなたが儲かるじゃない?
「ははは・・・確かにね。でも奴らは時々、お客さんに直接行先を訪ねたりするんです。こっちが申告した行先と違ったりしたら、そりゃ大変ですからね。ペナルティだけでなく、仕事も失うかもしれない。だから正直にやったほうがいいんです」
まーねぇ。確かに正直であることに越したことないか。ねぇねぇ、ところで会社には何%払うの?例えば今回の55ソレスのうち、いくら会社に払うの?「いやいや、ちょっとそこまでは・・・(苦笑)勘弁してくださいよ」はい、スミマセン。出しゃばりすぎました。
ちなみにこの気さくな運転手さんの息子(あれ、甥っ子だったか?)は日本人女性と結婚してい、今は日本で暮らしているそう。ってことで、彼も日本には2回ほど行ったことがあるんだって!空港タクシーの運転手って、しっかり稼げるいい仕事なんだねー。
そんな話をしていたら、あっという間に我が家に到着。もちろんさっきガソリン代として払ったから、そのままさくっと降りました。そんなこんな、空港タクシーのおっちゃんとの会話でした。