先週の日曜日、友達たちとPlaya(浜辺)に行った。「海でバーベキューしたーい!」と言っていたら、あれよあれよと実現した。車の用意をしてくれたり、「地元に友達がいるから」と情報収集してくれたり。君たちはなんて心優しき人たちなんだ!持つべきものはやはり友達ですな。とっても楽しかったです。本当にありがとね。
地元の友達のお父さんが浜の漁師から仕入れてくれた「Pez gayo(ペス・ガヨ)」、日本語名「ゾウギンザメ」。鼻の部分が伸びていてゾウのようなので、「Elephant fish」とも言うそうだ(ただし種類は多い)。南半球に生息し、約4億年前からその姿をほとんど変えていないという。お父さんが「こいつは骨がないから、調理しやすいんだ」と言って、セビーチェにしてくれた。レモンが効いたそれは、本当に美味しかった。
ひとしきり遊んだ後、Lurín(ルリン)に向かった。ルリン区はリマの南、パチャカマック遺跡の海側だ。2012年度のリマ市35区の安全度でベスト5に入っている古き良き町。(詳しくはこちらをご覧ください)昔ながらの習慣と人情が残っている、そんな下町。
週末とあって、町の広場ではフェリアをやっていた。風船や子供のおもちゃが売られ、ピカロネス(ペルー風ドーナツ)やパパ・レジェーナ(コロッケ)の屋台が並ぶ。穏やかな週末、みんなの笑顔。
ああ、本当にいい週末だ。
そんな中、お葬式の行列がやってきた。棺を担いだ男たちと、花を抱えた子供たち。遺族や友人知人が棺の後に続く。楽団が奏でる葬送行進曲に合わせながら、ゆっくりと墓地へ向かっていく。
お葬式の写真を撮るのはやはり不謹慎だろう。しかし、私の仕事にはどうしても写真が必要だ。書きたいネタがあっても、写真が準備できなきゃ応募すらできない。ネタと写真のストックがいくつあるかが勝負なので、こういう「ペルーの伝統的葬儀風景」はどうしても押さえておきたいものの一つだった。
周囲の視線を気にしながらカメラのシャッターを数回切った。すみません、申し訳ない、でももう少しだけ撮らせて下さい。もう少しだけ。
場所を移動し、もう一度構えた。しかし何故かここで、シャッターが下りなくなってしまったのだ。この前日本で買ったばかりなのに!シャッターはおろか、on/offのボタンさえ作動しない。「メニュー」などいくつかのボタンは生きている。レンズは開いているし、絞り値などは液晶に表示されている。なのに液晶画面そのものは真っ黒で、何も映らないのだ。
ふと、ある写真家さんの昔話を思い出した。「ミイラを撮影しようとした時、突然シャッターが下りなくなったことがある」と。某テレビ局のディレクターさんも、ミイラの画像を編集中、その編集機に不具合がでたことがあるそうだ。死者からの抗議だったのだろうか?それとも何かのメッセージ?
そんなことを考えたら、少し背筋が寒くなった。行列が去っていくことに焦りを覚えながら電池を何度か出し入れしているうちに、なんとかもとに戻った。背中にじっとりと冷や汗をかいていた。
日焼けと冷や汗に見舞われた1日。光と影、生と死が隣り合わせだった1日。この不思議な1日は、色んな意味できっと忘れられないだろう。
死生観にもよると思うけど、バリだと葬列をビデオで撮ってたら行列の少なからぬひとがこっちに向かってVサインしたりして、それはそれでまたちょっとどうなの?ですが(笑)
日本人にとって葬式とは厳粛にしめやかに執り行われるべきものだけど、場所や宗教によると「苦しみに満ちた現世から解放される」のが死という考え方もあるし、まあいろいろでしょう。
葬儀の場でバリのひとたちが晴れやかな表情なのは、ひとつにはやっと葬式を挙げられて(なにしろますますお金がかかるようになって庶民にはすぐには出来ませんから)、これでまた亡くなった家族が再び子孫として蘇ることができるという安堵の方が死別に対する悲嘆に勝るからでもありますね。
カトリックでも「帰天」という言い方があるぐらいですから、日本的な忌みの感覚は薄いのではないかしら。
他人の葬儀にカメラを向けることに対する感情はいろいろあると思うけど、葬儀の妨げにならないのなら問題ないのではないかと思います。まあどういう亡くなり方をしたのかによるかもしれませんが…
で、カメラの不具合は…もしそういう場面でない時にも起こるなら「初期不良」を疑った方がいいかも。ハイテク製品になればなるほど、そういうのありますもんね(苦笑)
ペルーもね、日本でいうほど忌み嫌うものではないように思うよ。もちろん人の死は悲しいけれどね。今回のお葬式の行列でも、割とにこやかな人もいたし、知り合いと笑いあっている人もいた。さすがにvサインはないけどな(苦笑) 私は報道カメラマンにはなれないなーと思う瞬間ですわ。ところでカメラは初期不良かも?!がーん、かもね。でも持って帰れないし、どうしようもないや。とにかく壊れないことを祈るのみです。とほほ。