チャチャポヤス3日目、やっと出発。
じーちゃんドライバーに連れられ、一路レバッシュへ。途中、民家の前で停まったじーちゃん、車の窓から顔を出して、そこにいたセニョーラに声を掛けた。
(じ) 「おーい、いつもの奴を二人前頼むよ。後で取りに来るから。そうさな、4時くらいかな」
聞くと、このセニョーラが作る「Cecina/セシーナ」は絶品なのだとか。いつもここを通る時は、奥さんの分と一緒に買って帰るという。ちなみにセシーナにはいくつか種類があり、アマゾナス州では干した牛肉を裂いたもの、いわゆるビーフジャーキー風が一般的なのだとか。イキトスあたりだと、豚肉の燻製(しかも裂いていない)が多いよね。どっちも美味しい、どっちも好き。
しかし、まだ旅は始まったばかりだ。全行程から見ると、たぶんここは随分手前に位置すると思うんだよね。4時に戻ってくるのって、どう考えても無理じゃない?実はじーちゃん、ここに4時に戻って来れるようあることを画策していた。↑ しかし、あとで簡単にバレて撃沈なり。まったく。
随分走ったところで車が停まった。見落としそうな小さな看板しかないが、ここが「Revash/レバッシュ遺跡」の入り口だという。車道から川に向かって少し下りたところに、馬が用意されているんだと。なーんか嫌な予感がしたが、「わし、ここで待っとりますんで、ほな、どんぞ」と言われ、4人で川底まで下っていった。
写真下に見えるのが、川を渡る橋(の屋根)。そこに馬と馬子が待っていた。馬に揺られながらガタガタの山道を登っていくと、そそり立つ断崖に、「霊廟レバッシュ」がある。ちなみに崖は遥か彼方、写真でいうと雲がかかってうっすらとしか見えない辺り。はっきりいって、むちゃくちゃ遠い!
さーて! ここでお待ちかねの問題がいっぱい。
まず馬を4頭お願いしたのに、3頭しかいなかった。今日から参加の友達は若くて健脚なため「ボクが歩きます」と言ってくれたが、足腰の弱い老人御一行だったら一体どうするつもりだったのか?
次の問題。馬が小さく、痩せすぎ。人を乗せるには、ある程度体のしっかりした馬が必要だろう。ましてやこんな山道である。どう考えても馬がかわいそうだ。なのに用意された馬はいずれもガリガリで、見るからに心もとない。100kg級のでかいおっさん御一行だったら、この馬、完全に潰れているよ?
最大の問題、ガイドがいない。馬を引くおばちゃんに聞くも、ケチュア語混じりの地元言葉でこちらのスペイン語が通じない。やられた、やられた、やられたー!!ガイドがいなきゃ、レバッシュなんてまったくわかんないーーー!!!
でもここまで来てしまっては、今更どうしようもない。「もしかしたら上のほうに観光用の小屋があって、そこに待機してたりして・・・」と死ぬほど甘い希望を抱きつつ、山道を進むこととなった。
・・・で。 もちろんガイドなんかいなかった。遺跡の少し手前で馬を降ろされ、自分たちで歩いて見てこいという。今日のガイドフィー、返せーーー!!!
Mausoleos de Revash/霊廟レバッシュ。2ヶ所あります。さて、どこか分かるかな?(クリックして拡大してみてね)いったいなぜこんな崖に先祖の墓を建てたのか。不思議な墓と不思議な人々。素朴だけど美しい。やっぱり来てよかった。
帰り道。
餌もろくに貰えていないのだろうか、それとも本当に疲れ切っていたのか、友達の乗った馬がとうとうストライキを起こしてしまった。何が何でも前に進みたくないらしい。引っ張られても鞭打たれても、前足を突っ張って一歩も動こうとしなかった。業を煮やした馬子のおばちゃん、「馬!進めって言ってるだろうが、このバカ馬!!」とそれは力いっぱい、何度も何度もその尻を叩いた。
なんだかもう見ていられない。友達もそのあまりの仕打ちに居たたまれなくなり、降りて歩き始めた。後からクレームを言われると思ったのだろう、おばちゃんは更に馬の尻を叩きまくった。(もちろんクレームです。)
馬は家畜だ。でも奴隷じゃない。そこまで嫌がるなら、何か理由があるはずだ。でも馬の性質やら体調やら、そんなこに想いを馳せるなんて発想のないおばちゃんは現金収入の機会を逃したこの馬に当たり散らしていた。
この地域に観光客が着始めたのは、たぶんここ数年のことだ。なかでもレバッシュはクエラップなど他の遺跡に比べて開発が遅れている。近隣の村人の観光に対する意識も遅れているであろうことは容易に想像できる。なのにある日突然、馬を持っているだけで現金が手に入ることを知ってしまった村人。外国人は何を望んでこんなところまでくるのか、そもそもレバッシュがなんなのか、そんなことはどうでもいい。馬が歩けば金になる。だから叩く。叩いて叩いて、とにかく歩かせようとする。「この馬!歩け、馬!」と叫びながら。
チャチャポヤス旅行はトラブル続きだったけど、後になってみればどれも笑えるものばかり。でもこの時のことだけは、今もどこかに引っかかったままだ。そもそも私たち観光客が来なければ、ただの農村で済んでいたのではないだろうか。少なくとも、こんな山道で馬が虐待されることはなかっただろう。動物愛護云々ではないが、さすがにこの時は見ていて辛かった。
観光業は地域を活性化する。でも地域住民の暮らしも意識も価値感さえも変えてしまう。良い方向に進めばよい。しかし大切な物が抜けたままだと、人の心は荒んでいくばかりだ。
他の代理店や旅行者に聞いても、レバッシュ観光はトラブルが多いらしい。ここを訪れる人は注意が必要。