ビザの種類や注意点について2回に亘って説明してきましたが、では実際にペルーで就労するにあたりどのような決め事があるのか簡単に記してみましょう。
ペルーで仕事をしたいと思っている日本人が、知人などを頼って、あるいは自力で就職したいペルーの会社を見つけたとしましょう。ペルーは日本と異なり、就職するにあたって必ず雇用契約を結ぶ必要がありますが、外国人と契約する際には使用者側に課せられる「四飜縛り」のルールがあります。
先ずひとつは、全従業員数に占める外国人従業員の比率が20%を超えないこと。すなわち、外国人一人あたり4人のペルー人従業員が働いていることが前提で、ペルー人従業員がもともと3人以下の会社ではこの条件を満たさないことになります。
二つ目は、外国人従業員の給与額が、その会社の給与台帳における報酬・給与額合計の30%を超えないこと。もっとも、ペルー人の雇用機会を保護するためには労働市場への過剰な外国人労働者の流入を防がなくてはなりませんから、これは至極当然のことと言えるでしょう。
三つ目は、雇用する外国人とその帯同家族の帰国交通手段を保証すること。世帯全員分の復路航空券の公証済コピーを提出すればいいので、これについては使用者負担でなくてもよいと思います。日本のように、食い詰めた外国人労働者を家族共々国費で帰国させてあげる羽目にならないためには、性悪説に立ったこのような予防措置も必要でしょう。
四つ目は、雇用契約で定められる外国人労働者の報酬額や権利、福利厚生条件などがペルーの民間労働体系の規準と比べ劣ったり下回ったりしないこと。つまり、ペルー人の最低賃金(2012年6月1日現在750ソレス/月)より月給が低かったり、休祝日がなかったり、1日の労働時間が8時間未満だったり、もらえるはずのボーナスがなかったりしてはいけませんよ、ということになります。安価な労働力でペルー人の雇用機会が失われないよう、ペルー政府はきちんと考えているんですね。
ただし、現在の職種もしくは資格が弁護士や公認会計士のような専門職だとか特殊技能を持った技術者の場合、または新規設立企業の経営者や管理者を務める場合、大学などの高等教育機関や初等・中等外国人学校、ペルーの私立外国語学校や外国語教育機関の教員になる場合などは、前述の四飜縛りの内最初の二つは適用されません。ただし、それなりの資格を有している旨についてそれぞれ権限を有した機関の証明が必要になるのは言うまでもありません。
四つのハードルをクリアしたあなたは、ようやく雇用契約締結のスタートラインに立てることになります。契約(有期)の期間は最長3年まで。継続して3年以内の延長が可能ですが、延長の際どこかの国で流行りの減給は認められなかったと記憶しています。また、いわゆる就労ビザの手続きは、この雇用契約が労働省に承認された後になります。長い道程ですが、一度決心したならくじけずにがんばりましょう。
尚、ペルー人の配偶者など、ペルー人の一親等の外国人はこれらの条件に関係なく、ペルー人同様に雇用契約を結ぶことができます。逆を言えば使用者はペルー人と同じ契約条件で日本の会社員の品質かつバイリンガルの社員が雇えることになります。日系資本の在ペルー企業がペルー人の日本人家族を雇用したがるのはこのためでしょう。同様に、移民ビザ(移住ビザと称するケースもありますが、個人的には移住と移民は別物だと思っています)所有者も雇用契約に関してはペルー人と同等の扱いになります。