pucaとはケチュア語で “赤”、picanteは “辛い”の意。アンデスの街アヤクチョの郷土料理Puca Picante(プカ・ピカンテ)は、ビーツとアヒ・パンカが織りなす鮮烈な色が目を引く一品。ピカンテといっても辛さは控えめ、ピーナツのコクが後を引く美味しさです。
プカ・ピカンテにはこんな言い伝えがあります。
「インカとの激しい戦いで深手を負い、ワマンガ(アヤクチョ)近くの故郷に命からがら逃げ延びた若きチャンカの戦士がいた。村の親戚たちは畑に横たわった彼の身体から流れる血に驚き、思わず『Puca!(なんて赤いんだ!)』と叫んだという。彼の母親はリャマの肉をピーナツとビーツで煮込み、息子に与えた。傷が癒えた戦士は再び戦場へと赴き、二度と戻っては来なかった」
“食べる輸血” と称されるほど栄養豊富なビーツを使った母の手料理は、若者につかの間の安らぎを与えたことでしょう。インカに徹底抗戦したチャンカ族の支配域であり、ペルーの独立を確固たるものにした歴史的な場であり、国中を恐怖に陥れたテロ勃発の地でもあるアヤクチョには、puca色の料理がよく合います。
【材料】2人分
- 豚バラ肉 250g
- ジャガイモ 2個
- ビーツ 1/2個(約50g)
- タマネギのみじん切り 1/2個
- すりおろしニンニク 大1/2
- アヒ・パンカペースト 大2
- ピーナツ 50g
- カルド・デ・チャンチョ(ポークブイヨン)またはカルド・デ・ポヨ(チキンブイヨン) 200ml前後
- ペレヒル(イタリアンパセリ) 少々
- 塩コショウ、クミン、オレガノ 適量
- オプション:イエルバブエナ(スペアミント) 1~2枝
- 付け合わせ:サルサ・クリオージャ、あればチチャロン
【作り方】
1、適当な大きさにカットした豚バラ肉に塩コショウとクミンをまぶし、しばらく置いておく。イエルバブエナがあれば一緒にマリネしておくといい。
2、ピーナツは軽く乾煎りしてミキサーまたはミルサーで粉状にしておく。
3、ジャガイモとビーツをよく洗い、皮ごと下茹でしておく(電子レンジ加熱も可)。ジャガイモは皮を剥いて豚肉より少し大きめにカット、ビーツは皮を剥いてミキサーにかける(必要に応じて水を少し加えて)。
4、鍋に油を多めに敷き、1の豚肉をよく焼いて一度取り出しておく。豚肉は脂がしっかり染み出て表面がカリッとしてくるまで焼たほうが美味しい(できればチチャロンにするのがベスト)。
5、アデレソを作る。4の鍋に油を足し入れ、タマネギのみじん切りとタマネギの水分を引き出すための塩ひとつまみを加えてよく炒め、タマネギが透き通ってきたらニンニクを入れて炒める。アヒ・パンカペーストを加えてさらに炒め、塩コショウ、クミン、オレガノを加えたらアデレソのできあがり。
6、5の鍋に豚肉とミキサーにかけたビーツ、カルド・デ・チャンチョを加えてひと煮立ちさせ、ピーナツの粉も加える。
7、6にジャガイモを加えてよく混ぜ合わせる。塩コショウで味を調え、仕上げにペレヒルを散らしてできあがり。
【keikoからひとこと】
先日旅行メディア『たびこふれ』さんに『アヤクチョのアクチマイ展望台』を執筆させて頂き、現地で頂いたプカ・ピカンテを思い出して作りました。赤く染まったジャガイモはインパクト大!初めて見た時はびっくりしました。
ポイントは豚肉をしっかり焼き付けておくことくらい、煮込み時間も短いしとっても簡単で栄養満点の一品です。ビーツの味が主張しすぎないよう、入れすぎには注意してくださいね。
現地の観光客向けのレストランではカリッと揚げたチチャロンを添えていることが多く、見た目もぐっと豪華。その代わりプカ・ピカンテ自体は豚肉なしの単なるジャガイモのビーツ煮込みになっているケースが多いようです。
私はジャガイモやビーツと一緒に豚肉も煮込んだほうが美味しいと思いますが、形よく揚げ焼きされた豚肉をひと切れだけ別に取っておいて、最後に盛り付けてもいいかもしれませんね。