ペルー生まれの黄金のリンゴ、トマト。アンデスに自生するこの植物は渡り鳥などによってメキシコに伝わり、そこで初めて栽培が試みられました。16世紀初頭にスペイン人エルナン・コルテスがヨーロッパに持ち帰り、長い時を経て現在の姿になったといいます。ペルー料理を探求する身としては、ジャガイモの品種改良を成し遂げたアンデスの人々にこそその重要任務を担って欲しかったんですけどね~。
そんな経緯があるからでしょうか、自国生まれの野菜や果物に関して大げさなほどの美辞麗句を並べるペルー人が、トマトに関してはそれほどの情熱を持って語ろうとしません。もちろんペルー料理にトマトは欠かせない食材ですが、アヒやジャガイモに対するほどの愛情は感じませんし、外来野菜であるタマネギやニンニクの地位にもまったく及びませんし。
イタリア移民がパスタとともにサルサ・ディ・ポモドーロを伝えた当時は、トマトを煮詰めただけのピュアなソースだったはず。「本当は俺たちのトマトだったはずなのにさー。そのまま使うのはどうも癪だし、こう何か一ひねりしてやりたい・・・そうだ、ニンジンを入れよう!どっちも赤いしバレやしないって」そんな子供っぽい声が聞こえてきそうな気がするのは私だけ?
ニンジンたっぷりのSalsa Roja(サルサ・ロハ/赤いソース)は、ペルーのお袋の味。ペルー人なら誰もが子供のころの温かな思い出と重ねるであろう、そんな優しいお味です。
【材料】2人分
- お好きなパスタ 180~200g
- 鶏もも肉 200~300g(今回は手羽元を使用)
- トマト 2~3個(約300g)
- ニンジン 1本(約150g)
- タマネギのみじん切り 1/2個
- すりおろしニンニク 大1/2
- アヒ・パンカペースト 大1
- トマトペースト 大1
- オンゴス・セコス(乾燥キノコ)2~3かけ
- ローレル 1枚
- 塩コショウ、クミン、オレガノ 適量
- 付け合わせ:パパ・ア・ラ・ワンカイーナ
【¡新食材! 】Hongos Secos(オンゴス・セコス=乾燥キノコ)について
Suillus Luteus(スイルス・ルテウス/ヌメリイグチ)というキノコを乾燥させたもの。ヌメリイグチは世界各地で栽培されているごく一般的なキノコで、その名の通り少しぬめりがあるため欧米ではあまり評価が高くないのだとか。ペルーでも生で食べることはなく、乾物の状態で売られています。
干しシイタケの濃厚な旨みに慣れている日本人には、どうもパンチに欠ける風味。正直あってもなくても変わらないんじゃないかと思うけれど、ペルーのトマトソース系の料理には必ずといっていいほどローレルとセットで使われます。個人的には乾燥マッシュルームのほうがずっと美味しいと思うんですけどね・・・まあ、本場のレシピってことでお見知りおきください。
【作り方】
1、鶏もも肉を使う場合は食べやすい大きさにカット、手羽元の場合は骨に沿って切り込みを入れておくと早く火が通るのでオススメ。鶏肉に塩コショウとすりおろしニンニク(分量外)、クミンを軽くまぶし、油を敷いた鍋で表面をこんがり焼きつけ取り出しておく。
2、カットしたトマトをミキサーにかける(私は丸ごとミキサーにかけていますが、トマトの酸味が苦手な人は種を取り除いて)。
3、皮を剥いたニンジンをすりおろす。食感を残したい人はチーズグレーターやしりしり器で細くおろしてもいい。
4、アデレソを作る。1の鍋に油を適宜足し、タマネギのみじん切りとタマネギの水分を引き出すための塩一つまみを入れてよく炒める。タマネギが透き通ってきたらニンニクを入れてよく炒め、アヒ・パンカペーストを加えてさらに炒める。次にトマトピューレを加え、塩コショウ、クミン、オレガノを加えたらアデレソのできあがり。
5、アデレソに2のトマトと3のニンジンを加えて一度煮立たせ、1の鶏肉とオンゴス・セコス、ローレルを加え、蓋をして加熱する。水分が少ない場合は、焦げ付かないよう水を少し加えて。より滑らかな食感がお好みなら、鶏肉などを加える前にトマトとニンジン入りのソースをブレンダーにかけるといいだろう。
5、鶏肉に火が通ったら塩コショウで味を調え、ローレルを取りだす(オンゴス・セコスは食べられるのでそのままでいい)。茹でておいたパスタを加え、よく混ぜ合わせたらできあがり。パパ・ア・ラ・ワンカイーナを添えて頂こう。
【keikoからのひとことアドバイス】
ペルーの赤いパスタソースは栄養も満点で、「ニンジン嫌いの子供もこれならよく食べる」という声を聞くほどの人気品。ペルーのニンジンは甘いので、砂糖を加えなくてもトマトの酸味はそれほど気になりません。
このレシピではトマトとニンジンが2対1になっていますが、ペルーではニンジン多めのレシピが優勢のよう。その日の気分でトマトを多めにしたり、ニンジンを多めにしたりしてくださいね。またお子さんがいる場合はアヒ・パンカペーストはなしで、トマトペーストを多めにして。ペルーのオリジナルレシピとは異なりますが、パプリカやセロリを加えるなどかなり応用が利きそうです。
そしてタジャリネス・ロハスの時は、パパ・ア・ラ・ワンカイーナもお忘れなく!パスタにジャガイモと炭水化物のオンパレードですが、これがまた合うんですよね~。パスタの量を減らしてもパパ・ア・ラ・ワンカイーナを添えるべし、であります。