ポンチョとは、アンデス諸国の伝統の一端を担うはるか昔から存在する衣服です。厚い長方形の布地の真ん中に頭を出す穴を開けただけという、着る人が動きやすくシンプルかつ実用的なデザインで、雨や風よけの外套として役立ちますが、機能性よりも民俗的な表情が際立っています。
プレインカ時代の主要な織物といえば、ペルーではパラカス文化が挙げられます。ポンチョとそれを取り巻く文化に関する興味深い3つの話題について、ペルー貿易観光促進庁(Promperú)が次のように紹介しています。
ポンチョの語源はケチュア語
ポンチョは多くの国で伝統衣装扱いされているため起源を確定するのは困難ですが、その名前の由来に関する説のひとつは「ポンチョ」という単語の語源に基くものです。スペイン人のアナーキスト兼作家、ディエゴ・アバド・デ・サンティリャンは、この衣装を意味するケチュア語の「プンチュ」がスペイン語化して「ポンチョ」になったのだろうと考えていました。
一方、ウルグアイ人の考古学者兼言語学者ラフォネ・ケベドは、ポンチョの穴から頭を出す様子が日の出を象徴していると考え、「昼間」を意味する言葉「プンチャゥ」との関連性を指摘していました。ポンチョという言葉の成り立ちについては、どちらも興味深い説と言えます。
ペルーのポンチョの前身はパラカスのケープ
パラカス文化の衣服のひとつであるケープは、房飾りのある四角い布地に頭を出すための切れ目が開いたもの。人類学者兼外科医のペルー人研究者フリオ・セサル・テーヨは、インカ時代に用いられていた衣服「ウンク」にちなみ、このケープを「ウンクーニャ」と名付けました。スペインによる植民地支配に反旗を翻したトゥパク・アマル2世の処刑後着用を禁じられたウンクですが、クスコ州パウカルタンボ郡のケロ(パウカルタンボ)集落では今でも使われています。
多様な地域性やデザインの意味
ペルーのいくつかの地域では、ポンチョの色彩に感情や文化的な意味があります。例えば、赤い縁飾りは太陽と大地の子に流れる血を、白は魂を、黒と青は空を、緑は農耕を表しています。ワニュイのポンチョは喪に服すために使われます。紺色に赤や緑、白などの縁が付いたクシュマは旅の装いに用いられます。
また、ポンチョの形状や大きさも地域によって異なります。クスコでは丈が短く幾何学的な模様が特徴とされ、カハマルカやプーノのものは丈がかなり長くなります。太平洋沿岸部では素材が変わり、山間部のようにアルパカ繊維ではなく綿が使われます。一方、アマゾンでは肩の部分をゆったりと編み、染料で幾何学模様を描いた先住民のポンチョ“クシュマ”が有名です。
悠久の時を経て、今も変わらずアンデス諸国の文化の一端を成す素晴らしいポンチョ。ペルー人の衣服としてこの先もずっと残り続けることでしょう。
(ソース: ペルー貿易観光促進庁/Promperú)