アングロサクソンの世界では、ペットとして多くの人々に愛されているクイ。少し臆病でちょこまかとよく動き、最大で一度に9匹まで͡仔を産み、その仔も2か月で成獣になるため驚異的なスピードで繁殖します。5匹から8匹程度のグループを作り寿命は通常4~6年、丁寧な世話で8年生きた例もあります。
アンデスでは郷土料理の食材にも使われるこの可愛らしい齧歯類の小動物について、私たちが知らなかった8つの知識をペルー貿易観光促進庁(Promperú)が次のように紹介しています。
10月第2金曜日はクイの日
ペルーにはクイの日があるのをご存じですか?毎年10月の第2金曜日、私たちは自国の文化の一端を担うこの愛くるしい動物を祝うのです。クイの日は2013年、農業灌漑省により80万以上におよぶ全国の零細クイ農家を支援する目的で制定されました。
ペルー人をカリカチュアライズした「エル・クイ」
ペルー人の生活において、クイはとても重要な役割を担っています。例えば1977年には、ユーモア作家で漫画家のフアン・アセベドが、お茶目な反面純情で優しいペルー人社会を描写したキャラクター「エル・クイ」を生み出しました。このクイは物語の中で、ペルーの著名な政治家だけでなく、時を遡って歴史上の重要人物にもコンタクトしています。
幸運を呼ぶクイのルーレット
クイは銀行のマスコットキャラとしてコマーシャルに登場するだけではありません。民間伝承では、飼い主に幸運や繁栄を呼び込むと言われています。このことから、クイ関連で特に人気のあるのが「クイのルーレット」。周りを円形に囲む(クイサイズの)小屋のひとつにクイが逃げ込むと賭けの勝者が決まるというゲームで、サッカーなどスポーツの勝敗予測に使われることでも有名です。
はるか昔から人と共に暮らしていたクイ
9000年前以降の遺跡からはクイの食べ滓が見つかっています。紀元前5000年にはすでに家畜化されていたようで、ワヌコ州にあるコトシュ遺跡の「交差した手の神殿」でも、紀元前2500年頃の遺構にクイを供物として儀式的に用いた形跡があることが明らかになっています。新たに発見されたこのクイについて研究者たちは、コロンビアからチリにかけてのアンデス地域全体に生息する Cavia tschudii や Cavia aperea といったクイの野生種が家畜化されたものと考えています。
患部をクイに“転写”するアンデスの民間療法 Pasar el Cuy
パサール・エル・クイ(Pasar el Cuy)とは、病気の原因を診断するためにクイを使う古来の伝承療法のことです。プレインカの時代から伝わるもので、祈祷師たちは患者の身体にクイをこすりつけて病気を吸い取らせます。やがてクイが息絶えると皮をはいで体内を調べ、どの臓器が影響を受けたか判断した上で、患者に処置や薬の処方を行います。
環境に優しいクイのフン
クイは植物の種や枝、果実を食べる草食動物なので、そのフンは農業にとても役立っています。クイのフンからは、植物の開花にあたり栄養分を補う堆肥や肥料を作ることができます。でも、それだけではありません。クイ農家と周辺住民の双方にとってクリーンでサスティナブルなエネルギーとなる大切なバイオガスの原料でもあります。
栄養価の高いクイの肉
クイを食べるペルー人への批判はさておき、クイの肉は低脂肪なだけでなく、他の動物に比べタンパク質やアミノ酸も豊富なことがわかっています。さらに、さまざまなガンの予防に役立つとする研究もあります。そのため、内外の食品業界では、ナゲットやハンバーガーなどの商品にクイの肉を使う試みが始まっています。
「最後の晩餐」にもクイが登場
おしまいに歴史の話題をひとつ。イエス・キリストが自身の処刑の前夜、十二使徒と囲んだ食卓に様々なアンデスの郷土料理と「クイのオーブン焼き」が並ぶバージョンがあるのをご存じですか?スペイン植民地時代、有名なクスコ派(※注釈参照)が、カトリックのイコノグラフィーとペルーの文化的要素を組み合わせた数々の宗教絵画を生み出しました。クイが登場する最後の晩餐の絵(トップ写真)は、世界遺産リマ歴史地区にあるサンフランシスコ修道院に飾られています。
(ソース: ペルー貿易観光促進庁/Promperú)
※クスコ派(La Escuela Cuzqueña de pintura)
クスコ派とは、スペイン副王領の都市クスコ(現在のクスコ)で生じた絵画の有名な派閥であり、スペイン統治下のアメリカ大陸では最右翼とされる。旧大陸の美術的伝統と、自らの現実や世界観を表現しようとするアメリカ先住民やメスティソ画家たち熱意、これら二大潮流の統合による独創性と高い芸術的価値が特徴。
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