Tacu Tacu a lo Pobre タクタク・ア・ロ・ポブレ

副王領時代にアフリカから連れてこられた黒人奴隷やその子孫たちが、残り物のシチューや冷や飯をどうやって美味しく食べようかと創意工夫する中で生まれたというtacu tacu(タクタク)。ぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたfrejoles(インゲン豆の煮豆)とご飯を香ばしく焼き固めた一品です。

ペルー人作家であり研究者でもあるJorge Yeshayahuは、『takaはスワヒリ語で“食べ物”の意であり、たとえば “taka za chakula=無駄な食べ物”のようにして使われる。当時は(カトリックの国以外の言語である)スワヒリ語を話すことは異端であるとして、リマの宗教裁判所によって禁止されていた。そのため人々はtakaをtaku(tacu)に変え、それがアフロペルアーノ語として定着した』としています。

『ケチュア語の “押しつぶされた” という意味から来ている』とする研究者もいるようですが、どうでしょうか。どうも後付けな気がするし、ペルーはなんでもアンデス由来にしようとする傾向があるので信ぴょう性に欠けると思うのですが。

肉やシーフードなど、何を添えても美味しいタクタク。でももっともタクタクらしい組み合わせといえば、ビステクと焼きバナナ(たまにポテトフライ)、目玉焼きを添えた a lo pobre(ア・ロ・ポブレ)です。“pobre=貧しい、貧乏な人”という意味とは裏腹に、なんて豪華な組み合わせ!

この3点セットがなぜア・ロ・ポブレと呼ばれるのか、その理由は明らかになっていませんが、一説には『刻んだり煮込んだりと手の込んだ家庭料理が多いペルーにあって、ただ食材を焼いて重ねるだけというシンプルでスピーディーな調理が簡単すぎてファーストフード的に見えたから』だとか。料理名に関するペルー人の命名センスはウィットに富んでいるし、ほんと秀逸です。

【材料】2人分 

【作り方】

1、フレホーレスとご飯をレンジで軽く加熱し、扱いやすくしておく(熱々にする必要はなし)。

2、フライパンに油を敷き、1のフレホーレスとアヒ・アマリージョペーストを入れて軽く炒める。フレホーレスが固いようなら、カルドか水を少し加えて柔らかくして。そこにご飯を入れて全体をよく混ぜ合わせ、塩コショウとお好みでクミンやオレガノを加え味を調える。別皿に取り出しておく。

3、2のフライパンをきれいに洗い、油を少し多めに入れて加熱する。フライパンが熱くなったら2の半量をフライパンに入れて丸く広げ、片面をじっくり焼く。焦げ色がついてきたらフライパンを動かしながら少しずつ返して、オムレツのような形に仕上げていく。全体が香ばしく焼きかたまったらできあがり。

4、3のフライパンの汚れをペーパーでさっとふき取り、目玉焼きを作って取り出す。次に縦半分にカットしたバナナを焼いて取り出す。最後に叩いて塩コショウとニンニクのすりおろしを少し塗った牛肉を焼く。仕上げにバターを少し入れるとなおよし。

5、皿にタクタクを乗せて、その周辺に焼きバナナと牛肉、目玉焼きを盛り付け、最後にサルサ・クリオージャを添えたらできあがり。

【Keikoからのひとことアドバイス】

フレホーレスなどの煮豆をまとめて作ったら、残りはいつも冷凍保存。それを使って作ったタクタクは、まさに「余りモノのtaka」にほかなりません。でもタクタクのためだけに煮豆を作るのはやはり大変ですから、ペルー人家庭でもこういう使い方をしていると思うんですよね。

タクタク作りの秘訣は、煮豆とご飯のバランス。2:1を基本に、あとは手元にある煮豆の量に合わせて調整すればいいと思います。またタクタクをたくさん入れすぎるとひっくり返すのが大変なので、お手持ちのフライパンの大きさに合わせてタクタクの量を増減させてください(今回は直径24cmのフライパンを使用)。

一度聴いたら忘れない、愉快な響きのタクタク。一見大したことなさそうなのに不思議と後を引く美味しさで、お腹いっぱいなのになぜか手が伸びる・・・そういう類のある意味危険な料理。食べ盛りのお子さんにもぴったりな一品です。