ハチノスの煮込みcau cau de mondongo(カウカウ・デ・モンドンゴ)は、ペルークリオージャ料理を代表する一品。丁寧に下処理した牛の胃は臭みもなく、そのトロッ、プニャッとした食感は癖になります。
カウカウ誕生にはいくつかの説があり、『ケチュア語のacacau(アカカウ=熱い)が変化したもの』や、『 can(カン=鶏の臓物)に由来する』などのアンデス起源を唱える人もいるよう。また『中国人移民が食材を小さく刻む時に使う“カウカウ”という音素がもとである』ともありました。しかしながら、いずれも無理があるように思えてなりません。
臓物の煮込みといえば、アフリカ人の得意分野。ガストン・アクリオは『カウカウは明らかに黒人由来の料理』と断言しており、私もこれに賛成です。黒人奴隷という負の遺産の存在をなかったことにでもしたいのでしょうか。それこそ彼らの食文化への敬意に欠けるというものです。
私がアフリカ由来説を押すもう一つの理由は、モンドンゴの臭み消しにイエルバブエナ(スペアミント)を使うこと。牛や豚などの家畜とともに旧大陸から伝わったイエルバブエナ、その効能と有効な使用方法を知っていたのは、やはりスペイン人の台所を任されることが多かったという北アフリカの人々ではなかったかと思うのです。
ペルーではモンドンゴや豚肉の臭み消し&香りづけに、イエルバブエナは欠かせません。モンドンゴとならんでマストなので、ぜひご準備くださいね。
また今回は、下処理済みのモンドンゴを使用しました。リマのスーパーやメルカドには、すでに下処理した上にカウカウ用にカットしたモンドンゴが売られているんですよ。お値段はキロ当たり300~500円、こんなに財布に優しい食材を使わない手はありません。
【材料】2人分
- モンドンゴ(ハチノス) 200g
- ジャガイモ 200g
- タマネギのみじん切り 1/4個
- ニンニクのすりおろし 大1/2
- アヒ・アマリージョペースト 大1
- イエルバブエナ(スペアミント)3~4枝
- カルド・デ・モンドンゴ、または水 200ml
- ニンジン 1/3本
- グリーンピース 1/4カップ
- 塩コショウ、クミン、オレガノ 適量
- オプション:クルクマ(ウコン)1~2g
【作り方】
1、モンドンゴをよく洗い、余分な脂や粘膜を取り除き、1.5~2cm角にカットしておく。ジャガイモとニンジンを小さめの角切りにしておく。ジャガイモは水にさらしておく。
2、鍋に湯を沸かし、1のモンドンゴとイエルバブエナを2~3枝入れて、モンドンゴが柔らかくなるまで茹でる。モンドンゴが柔らかくなったら茹で汁(カルド・デ・モンドンゴ)と別けて取っておく(イエルバブエナは破棄する)。
3、アデレソを作る。鍋に油を敷き、タマネギのみじん切りとタマネギの水分を引き出すための塩ひとつまみを入れて炒める。タマネギが透き通ってきたらニンニクを加え、次にアヒ・アマリージョペーストを入れてよく炒め合わせる。もっと風味をつけたい人や、モンドンゴの臭いがどうしても気になるという人はここでクルクマを加えてもいい。ただ入れすぎるとカレー風味になってしまうので、少しずつ入れてしっかり炒めよう。軽く塩コショウとクミン、オレガノを加えて炒めたらアデレソのできあがり。
4、3のアデレソにカットしたモンドンゴとジャガイモを加え、カルド・デ・モンドンゴを加えて加熱する。時間差でニンジンとグリーンピースを入れ、野菜が柔らかくなるまで煮込む。
5、塩コショウで味を調え、仕上げに残しておいたイエルバブエナの葉を刻んだものを加え、さっと混ぜ合わせたらできあがり。
【Keikoからのひとことアドバイス】
今回使ったモンドンゴは最初からとてもきれいで、しかもイエルバブエナの効果もあったのでしょう、2でできた茹で汁はまったく臭みがなかったのでそのままカルドとして利用しました。でももしその茹で汁が臭うようなら、無理せず水を使ってください。
またもしホルモン系がお好きなら、一人当たりの量をもっと増やしてくださいね。というのもモンドンゴは加熱すると縮んでしまいます。我が家としてはジャガイモの存在感がちょっと勝っているほうが好きだけど、人によっては物足りないかもしれません。
リマの名店「El Señorío De Sulco」のFlavio Solórzanoは『モンドンゴはジャガイモの2倍入れるべし!』と言ってましたが、さすがにそれは多いかも?でもこれが正解というものはないので、調整してみてくださいね。