Puré de Pallares プレ・デ・パジャーレス

『およそ5000年前のこと。真っ白な衣装に身を包んだYan Pallek(ヤン・パエック)という神が、水と祝福を授けたパジャールの種を撒き、イカの谷を愛で満たしました。人々は神の与えた糧によって、命を繋ぐことができました。

イカの谷は幸福と平和に満たされていました。しかし時が過ぎ、いつしか谷の人間たちは少しずつ神の子パジャール以外の豆類を食べるようになりました。それを知った神は涙を流し、姿を消すと二度と谷に戻ってきませんでした。

突然、深い静寂が谷を襲い、神の涙は濁流となってパジャールの谷を駆け巡りました。人々は神の許しとその帰還を求め、何千もの生贄を捧げ巡礼を続けました。アンデス山脈から太平洋岸まで、イカの砂漠を干ばつと飢餓、荒廃が襲いました。『Yan Pallekよ、どうか戻り給え!』その祈りの声は、パラカスの風に乗って神のもとに届きました。

そして神は戻ってきました。心から慈しんだその谷を哀れみ、イカの大地を地球上でもっとも美味なるパジャールが収穫できる豊かな谷に変えるために』※ガストン・アクリオ著『¡Bravazo!』より。

リマ南部イカ州特産であるライマメの一種pallar(パジャール)豆は、ペルーの国家競争・知的所有権保護庁(INDECOPI)により、 「原産地呼称制度」の適用を受けた国産10製品のうちのひとつ。炭水化物とタンパク質、繊維質が豊富で、カリウムやカルシウム、鉄、亜鉛、銅のほか、ビタミンB類を多く含んでいます。

ペルーでは乾燥状態のものと、鞘に入ったフレッシュなものが売られています。

今回は白い神様のいとし子、パジャール豆を使ったプレ(ピューレ)をご紹介。白あんの原料にも使われる豆なので、あの味がお好きな方にはたまらないと思います。

【材料】作りやすい量(約3人分)

  • 乾燥パジャール豆(ライマメ) 250g
  • タマネギのみじん切り 1/2個
  • ニンニクのすりおろし 大1/2
  • 豚の皮(または皮のついた豚バラ肉)、もしくはベーコン 80~90g
  • バター 20g
  • エバミルク、または牛乳 大2
  • 塩コショウ、クミン、オレガノ 適量
  • 付け合わせ:サルサ・クリオージャ、チチャロン

【作り方】

1、調理の前日に、たっぷりの水にパジャール豆(以下:マメ)を一晩浸けておく。

2、プレをより滑らかに仕上げたい人は、一晩水につけてふやかしたマメの皮を取り除く。さほど気にしない人はそのままでいい。

3、鍋にマメとマメが十分浸かるくらいの水を入れて茹でる。沸騰して泡が大量に出てきたら、一度茹でこぼす。

4、3の鍋にマメとひたひたの水、豚の皮を入れ、蓋をして茹でる(水が少なくなったら適宜足すこと)。

5、4を茹でている間に別のフライパンに油を敷き、タマネギのみじん切りを入れて炒める。タマネギが透き通ってきたらニンニクを入れて再度炒め、塩コショウ、クミン、オレガノを加えて炒め合わせ、4の鍋に入れ、引き続き加熱する。

6、マメが柔らかくなったら豚皮を取り出し、マメをミキサーにかけてピューレ状にする。再度鍋に戻してエバミルクを加え、中火で煮詰めていく。プレは焦げつきやすいので、鍋底からしっかり丁寧にかき混ぜよう。

7、仕上げにバターを加え、塩コショウで味を調えたらできあがり。皿にご飯をプレを盛り、付け合わせとサルサ・クリオージャを添えて頂こう。

【Keikoからのひとことアドバイス】

イケーニョ(イカっ子)が愛してやまないパジャール豆。茹でると意外と早く火が通るし栄養も豊富なので、もっと活用したい食材ですね。圧力鍋で調理すれば、あっという間にトロトロになります(圧力鍋を使用する場合は、4の段階で加圧10~15分+自然冷却。これならアデレソを加えたあとも煮続ける必要がありません)。

また豚の皮を入れるところも面白いですよね。皮に含まれるコラーゲンがゼラチン化することでプレがもったり仕上がるし、うま味も加わります。今回は滑らかなプレを目指したので豚皮は取り除きましたが、豆の食感を残す料理なら、豚皮も刻んで一緒に食べちゃってください。また豚皮の代わりにベーコンを入れても美味しいですよ。

今回の付け合わせには先日作ったチチャロンを添えましたが、牛肉のクラントロ煮seco de res(セコ・デ・レス)もオススメです。煮豆料理との相性抜群のセコ・デ・レスのレシピも、すぐにご紹介しますね。

5000年前に栄えたという世界遺産カラル遺跡でも、当時の人々がパジャール豆を食べていた痕跡が見つかっているそう。Yan Pallekが慈しむペルーの大地は、本当に豊かです。