ケチュア語で「pepián/すでに濃い状態にある」「choclo/トウモロコシ」という名を持つこの煮込み料理。アンデスで食べられるトウモロコシ料理なのだからさぞや古くからあるのだろうと思いきや、ペルーでペピアンの記述が登場するのは意外にも遅く、18世半ばになってからだそう。
それもそのはず、インカ帝国においてトウモロコシは聖なる作物であり、少なくとも下々が日常的に口にすることはありませんでした。インカが滅亡したことでトウモロコシに関する縛りが無くなり、アンデス先住民の間で自然発生的に生まれたのではと推察します。
「(インカは滅んだし)もうトウモロコシを食べても役人に怒られることはないんだ!」なんて思った食いしん坊が、バタン(石臼)ですり潰したトウモロコシにアヒやハーブを加えて作ったんでしょうね。最初はスープ状だったかもな~、時にはリャマやアルパカの肉も一緒に煮込んだんだろうな~なんて想像するのはとても楽しいです。そういう名も無き人々の好奇心と食への探求心が、今のペルー料理を築いてきたんですね。
ペルーのチョクロはいわゆるジャイアントコーンで、スイートコーンより甘さは控えめ。日本でも冷凍品が販売されているので、良かったらチェックしてみてください。
基本のペピアン・デ・チョクロ
【材料】2人分
- チョクロ 1本
- タマネギのみじん切り 1/4個分
- ニンニクのすりおろし 小1
- アヒ・アマリージョペースト 大2
- アヒ・パンカペースト 大1/2
- チキンブイヨン 200~300ml
- 油、塩コショウ、クミン、オレガノ、バター 適量
【作り方】
1、包丁などでそぎ落としたチョクロの実と水少々をミキサーに入れ、よくかくはんしてピューレ状にしておく。
2、アデレソ(調味ペースト)を作る。鍋に油を入れタマネギをよく炒める。タマネギが透き通ってきたらニンニクを入れ、再びよく炒める。ニンニクの香りが立ってきたらアヒペーストを入れてさらに炒め、塩コショウとクミン、オレガノを適量加えて味を調える。これでアデレソの完成。
3、2のアデレソにピューレ状にしたチョクロを加えて混ぜ合わせ、チキンブイヨンも入れてしばらく煮込む。粘化したチョクロは焦げ付きやすいので、なべ底からしっかりかき混ぜながら加熱すること。好みの濃度に煮詰めたら、仕上げにバターを加えてできあがり。
【応用編】
その1:基本レシピ2番のアデレソに、クラントロ(コリアンダー)の葉をミキサーにかけたもの大2ほど加えると、トップ画像のようなグリーンのペピアン・デ・チョクロのできあがり。
その2:ペピアン・デ・チョクロと肉類を一緒に煮込んでも美味しい。できあがったアデレソに塩コショウやクミンで下味をつけた鶏むね肉を加えて炒め、その後ピューレ状のチョクロを入れて煮込むとか。鶏もも肉を使用するなら、油を敷いた鍋で鶏肉の表面に香ばしい焼き色をつけてから、その旨みをこそげとるようにしつつアデレソを作る。そこに鶏もも肉を戻してチキンブイヨンを加えてよく煮込み、最後にチョクロのピューレを加えるといいだろう。いずれにせよ鶏肉に完全に火が通るよう、水分を多めに入れて徐々に煮詰めるようにすること。
【Keikoからのひとことアドバイス】
トウモロコシの煮込みというより、トウモロコシのプレ(puré/ピューレ)といったほうがしっくりくるペピアン・デ・チョクロ。付け合わせは自由自在で、たとえばトップ画像のものはクラントロ入りのペピアン・デ・チョクロの色が映えるよう、Pollo a la Plancha(ポヨ・ア・ラ・プランチャ/ペルー風鶏むね肉のソテー)と目玉焼きを添えてみました。ご飯にはトウモロコシと3色キヌアを炊きこんでいます。
ポヨ・ア・ラ・プランチャは薄く開いた鶏むね肉を焼いただけですが、塩コショウとニンニクのすりおろしに加え、レモン果汁を少々ふりかけてから焼くのがペルー風。パサつきがちな胸肉がしっとり仕上がるのでぜひお試しくださいね。
それにしてもプレはヤバい、とにかくご飯が進んで仕方がありません(苦笑)。ペルー人はご飯をたくさん食べたいからプレ系メニューをあれこれ考案したのか、プレ系メニューが多いからご飯が好きになったのか定かではありませんが、彼らのご飯好きにプレの存在が大きく影響しているのは間違いないと思います。トウモロコシやジャガイモ、カボチャなど野菜のプレだけでなく、煮豆の種類も多くて、これがまたご飯が進むんだ!ペルーで糖質制限なんて、まるで人生の喜びを放棄したようなもの、せめて摂取量を調整するくらいしか、この美味しさに抗う術はありません。