ビクーニャやアルパカ、リャマは南米のアンデス山岳地帯を代表する世界的に有名なラクダ科の動物です。このうちビクーニャはチリ、ボリビア、アルゼンチン、エクアドルにも分布していますが、生息数ではペルーが最大です。また、国章の一部を飾るなど、ペルーにとっては特別な意味を持つ動物でもあります。
ビクーニャは世界でもごく繊細な獣毛を持つ美しいラクダ科動物であり、その繊維は世界一高価とされています。また一方では絶滅の危機に瀕し、いまでも種の存続が懸念されている(低危機種)動物でもあります。すなわち、あまたのペルー人や旅行者から敬愛され、大切にされるべき種なのです。ビクーニャのことをもう少し詳しく紹介しますね!
ビクーニャの特徴って?
ビクーニャ(Vicugna vicugna)は、アンデス山岳地帯に生息する最も小柄なラクダ科の動物で、体高約80cm、体長約1.80m、体重は35~45kgになります。野生で人には慣れていません。獣毛の色は背中がシナモン(くすんだ黄赤)、腹側は白く、胸には白い房毛があります。四肢は細長く、足先にはクッション性があり様々な地形を歩くことができます。
アンカシュ、アプリマック、アレキパ、アヤクチョ、カハマルカ、クスコ、ワンカベリカ、ワヌコ、イカ、フニン、ラ・リベルタ、リマ(一部)、モケグア、パスコ、プーノ、タクナ各州の主に標高3200m以上のアンデス高地に生息し、寒くて乾燥した気候に順応しています。繊細な獣毛が密集した毛皮の国際市場価格は、1kgあたり400ユーロにもなります。
保護動物ビクーニャ
ビクーニャの獣毛は、あのインカ帝国でさえ王族しか身に着けることができない神聖なものと見なされていましたから、高くても当たり前ですね。この貴重な獣毛が災いし、ビクーニャは常に密漁の犠牲となり、その毛皮が違法に売買されてきたのです。
スペイン植民地時代から共和国時代に至る間、ビクーニャは長年にわたり無分別に狩られ、1960年代には国内でわずか5000頭まで減り、絶滅危惧種に指定されました。このような背景から、ビクーニャの個体数増加を促す目的でパンパ・ガレラス国立保護区が創設され、彼らを密漁から保護する法律も定められました。
現在国内のビクーニャは20万頭以上を数え、絶滅危惧種の指定から外れて(低危機種)いますが、いまだに個体数の維持が懸念されており、レンジャーや自然保護団体の粘り強い努力で常に監視が続けられています。
ペルーの国章になぜビクーニャが?
1825年、フランスの啓蒙主義に感化されたイポリト・ウナヌエとホセ・ゴレゴリオは、初期のバージョン※がそうであったように、国章(国家の紋章)にペルーの自然の恵みを表現する要素を取り入れることを提案しました。その繊細な獣毛で世界的に名高いビクーニャは、こうしてペルーにおける野生動物を代表するようになったのです。
その年以来ビクーニャが国章から姿を消すことはなく、今ではすべてのペルー人にとって非常に大切な身分証明書(DNI)のデザインに用いられ、さらに昨年(2021年)改定された10ソレス紙幣にも描かれました。これらはすべてペルーの誇りです!
それゆえ私たちペルー人は、皆でこの貴重な動物を保護し、その繁殖と成長を促進するため、彼らの生息地を守る義務があるということを肝に銘じなくてはなりません。いつも私たちのビクーニャに目を向けていましょう!
※1821年にペルーの独立を宣言したアルゼンチンのホセ・デ・サン・マルティン将軍が、同年10月21日に現在のイカ州ピスコで公布した法令により初めて制定されたペルーの国章の意匠。アンデス山脈やコンドル、リャマなどが描かれていた。
(ソース: ペルー貿易観光促進庁/Promperú)