リマは今が一番いい季節だ。朝晩はちょっと冷えるが、日中の抜けるような青空は何物にも代えがたい。公園や庭先の木々が艶やかな新芽を延ばし、ブーゲンビリアが日々色濃くなっていく。小鳥のさえずりが、高く高く響き渡る。
リマを彩る夏の花と言えば「Tipuana tipu」。うちの近くの大木はスロースタートだったが、今はすっかり満開だ。ティプアナ・ティプの花が地面を黄色く染めるころがクリスマス。年末だともう散り納めといった風情だが、個体によって差があるので長く楽しめる。その前はハカランダの紫が、もう少し前はボトルブラシの赤が街角を彩っていた。春以降、リマの街は色彩に溢れる。
この時期になるといつも思うのだが、なぜリマ市はこういう街路樹を活かした観光政策を取らないのだろう。日本やワシントンD.C.は桜、ブエノスアイレスや南アフリカはハカランダ、カナダ(日本も)は紅葉など、世界各国で四季を告げる植物をメインにした祭りやツアーが開催されている。街路樹は素晴らしい観光資源。これを活かさない手はないと思うのだが。
先日「リマは南米で最も過小評価された観光都市」というニュースを見た。「冬はともかく、夏はこんなに爽やかだし、グルメも楽しめるし、夜も遊べるし、リマってすっごくいいのに!」と。でもそれは仕方ない。北半球のバカンスシーズンである6~8月は、リマの天候が最悪な時期。1年の半分以上がイマイチなんだから、過小評価もへったくれもない。だいたいそれ以前に、渋滞とか治安とかもっと大きな問題があるだろう。それを忘れて何を言ってるのか。
だからこそ、自然を取り込んだ観光に注力すればいいのにと思う。街路樹の交換はたやすくはない。時間がかかるし、住民の理解も必要だろう。でも数年後には地域の宝になる。子供の情操教育にもいいだろうし、なんといっても環境問題を考えるよいきっかけになるはずだ。
「あの花の名前?うーん、“花”だよ」なんて答えるペルー人たちには、その価値が分からないのかしら?アマゾンの奥地に自生する超レアな蘭を一生懸命自慢したって、観光客は増えないぞ。