2006年のマドリッド・フュージョンにおいて、「アメリカ大陸における美食の首都」という栄誉に輝いたペルーの首都リマ。以降グルメの都として発展し続け、2012年には「World Travel Awards (ワールド・トラベル・アワーズ/WTA) 」の「世界最優秀グルメ観光地賞」を初受賞、以後4年連続で受賞するなど、その地位はすでに盤石のものとなりました。ペルー発のグルメは欧米での評価が特に高く、今では各地にペルー料理店やニッケイ料理店がオープン、その存在感を知らしめています。
「2º Foro Mundial de Turismo Gastronómico(第2回 美食ツーリズム国際フォーラム)」は、食と観光の可能性を模索する国際会議。Mincetur(ペルー通商観光省)とPromPerú(ペルー輸出観光振興庁)、OMT(国際観光機関)、スペインのバスク・クリナリー・センターの協力により、4月27日(水)~29日(金)の3日間、リマ・コンベンション・センターで開催されました。(27日は市内でのイベントやオープニングセレモニーなど)この日のために世界各国から400名以上のグルメと観光に関するエキスパートたちが集い、現状把握から問題点の共有、その解決策についてなど、21世紀における美食ツーリズムの可能性について議論しました。
このフォーラムではペルー、メキシコ、アルゼンチン、チリ、アメリカ、カナダ、スペイン、フランス、ノルウェー、トルコ、中国、そして日本から招待された観光・飲食業関連のスペシャリストたちによる公開セッションのほか、個別テーマによる勉強会が行われました。参加登録者は2300人以上、中にはNGO関係者や考古学者、人類学者といった人々も少なくなく、単に「投資とビジネス」という観点でなく、「サティスナビリティ」「文化」「ローカル」「共存」「教育」いうテーマでも議論され、大変内容の濃い会議だったと思います。
数々の素晴らしい観光資源を持ちながら、その開発が遅れているペルー。交通インフラが脆弱な上に治安上の問題があり、サービスレベルもまちまちです。歴史遺産や希少な自然の保護はおざなりで、気候変動だけでなく営利目的のために次々破壊されています。加えて新しい価値を創造する力が弱い。他国に指摘されて初めて気づくことがどれほど多いか・・・。会議の中でも「investigación(調査・研究)」の重要性が何度も指摘されていました。
一方、ペルーのガストロノミア(美食)においては世界がその価値を認めており、世界でも強いリーダーシップを発揮しています。国民がこれほど自国の「食」に誇りを抱き、「食」を通じて団結できる国はそう多くはありません。ただ現状では、ガストンを始めとする一部の有名シェフたちにぶら下がっているだけのようにも見えてしまいます。リマや一部都市だけが盛り上がっていても、ペルー国内の美食ツーリズムは成功しません。せっかく持っている「食」というアドバンテージを、観光とどう結びつけ発展させていくか。今回の国際フォーラムをペルーで開催できたことは、この国が次のステージへ進むとてもよい機会になったと思います。