ペルー人の表と裏

恒例のアパート会議が行われた。今回の主目的は、1階に越してくる新しい隣人の紹介だ。現在1階は大改装中で、我が家を含む隣人たちはみな日々の騒音と埃に悩まされている。が、この引っ越し前のリフォームはペルーの常、我慢するしかない。

とは言えあまりにも大胆な改築に、みんなが警戒心を抱いていた。なんたって壁をガンガンぶち壊わして、部屋の形を思いっきり変えてるんだから。あんたんとこは1階だよ?このアパート全体を支えてるんだよ?しかもあんたの部屋の下は地下駐車場なんだよ?耐震設計とかちゃんと考えた?…だがもう後の祭り。正直言って物凄くコワイ。

この日出席した奥さんのパティはリフォーム大好き人間らしく、挨拶もそこそこに、「このアパートの正面玄関をリフォームしましょう!」と提案してきた。このオープンさというか、遠慮のなさは見習いたいところだ。頭を下げた上に菓子折りを配るような日本人には、絶対できない技である。

私もびっくりしたが、他の人もびっくりしたらしい。パティが「あら、もう時間だわ。じゃまたねー」と帰ってしまった後、残された住人達は好き放題言い始めた。さっきまで「あなたたち夫婦はこれから私達の家族同然よ♪」なんて言ってたくせに、帰った途端、あの女は自分勝手だとか、あのリフォームはスルコ区の許可を得てないはずだから何かあったら訴えようだとか、毎週parrillada(バーベキューパーティ)をしたら水をぶっかけてやるとか、とにかくすごい。日本人同様、ペルー人にも表と裏がしっかりある。分かりやすくていいが、ペルー人と友情を育むのは難しなぁと思う瞬間でもある。

そんな時、アパート管理を引き受けてくれている下階住人のマルコが私にこう言った。「keiko、この前ガストンと喧嘩してたかい?」

そうそう、実は数日前、私は上階のバカ男と喧嘩したところだった(バカ男はアパート会議になると“熱がでる”のでいつも不参加)。上階の騒音にはこれまでも悩まされてきたが、今は日中の工事音で精神的に疲れている。夜くらい静かに過ごしたいのに、こともあろうかこのバカ男は、夜になってから戸棚にくぎを打つような真似をするのだ。さすがに我慢できず文句を言いに行ったら、バカ男は「俺の家なんだからほっといてくれ!」とほざくではないか。あんまりムカつくから、こっちも「あんたたち一家の存在が迷惑なのよ!」と直球で返しておいた。そう言う声がみんなに聞こえていたらしい。はは、申し訳ないこった。

さっきまでパティの悪口を言っていたオバサマたち、今度はバカ男の悪口を言い始めた。「ほんと、あいつは常識がないよの!」「ついでにあそこの妻も頭がおかしいんだよ!」いない人への悪口はまったく容赦がない。

何にせよ、これからバカ男宅が何かをしたら、他の住人が対応してくれることになった(たぶん)。有難いことだ。ちなみにこのクレームの後、バカ男宅はとても静かなのだが。恐らく彼は、他人に言われて初めて自分の所業を知るタイプなのだろう。でもって、人には絶対誤らないけど、後からあれこれ気にするのではと分析。だったらもっと早く言えばよかった。これまでもバカ娘が暴れた時は、窓から「Hija malcriada!」と叫んでたんだけど、やっぱり直接言うかどうかが鍵らしい。

裏では色々ありつつも、このクソ暑い中でbeso&abrazoを欠かさない人たち。友情には程遠いが、こういうノリはやはり大切だと思う。Feliz día del amor y amistad! 皆さまもよい一日を♪